アレの名前――「佐々木さん」の真ん中のアレ

たとえばの話だが、「とうきょう」という漢字を言葉だけで伝えようとしたら、どのように話すだろうか。
「東西南北の“東”に、京都の“京”」とか、そんな感じだろうか。「東さんの“東”に、京唄子の“京”」とかまあ、そう言った違いは当然あるが、この際どうでもいい。
では、「よよぎ」だとどうだろう。
「代表の“代”に…………ウッドの“木”」などという説明の“…………”に当たる部分、あなたならどう言っているだろうか。おそらく、「“佐々木さん”の……あの真ん中の……」などと言うはずである。そうアレの名前、“々”ってなんと呼べばいいのだろうか。


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ほら、あれだ、代々木の……真ん中の!

そもそもの話、文章中に出てくる記号的なものを総称して「約物」といい、“々”もそのひとつ。約物には、和文だったら句点(。)、かぎカッコ(「」)や疑問符(?)などなど、欧文だったらピリオド(.)、スラッシュ(/)先ほどから出ているダブルクオーテーション(“”)などなどがある。つまり、“々”は文章を書く上で欠かせないパーツとして存在しており、漢字など文字というわけではない。固有の読みがあるわけではないので、代々木だったら“よ”、佐々木だったら“さ”、喧々囂々だったら“けん”であり“ごう”と、変幻自在なのである。

そんな“々”、これを「踊り字」という(「重ね字」なども可)。なお「いすゞ自動車」などの“ゞ”も同様である。
ちなみに、原稿用紙などに書く場合は禁則もある。「夜が白々と……」などの文章で、“白”が行末の場合、次の文頭は“々”ではなく“白”になる。ただし、「佐々木」、「代々木」、「いすゞ」など、固有名詞の場合は当たり前だがその限りではない。