毎年4月中旬の日曜日、東京ではミャンマーのお正月祭りが開かれる。今年は11日、井の頭公園の西園での開催となった。このお祭りは「ダジャン」または「水かけ祭り」と呼ばれている。「水かけ」といっても東京ではまだ暑いとはいえないこの季節、実際に水をかけることはないのだが。
それでも会場には野外ステージが設けられ、食べ物や雑貨などの屋台がひしめき、朝から夕方まで一日中にぎやかな、在日ミャンマー人が楽しみにしているお祭りである。
ステージでは開会の挨拶に続き、日本人のゲストバンドのロック演奏や、ミャンマーの伝統音楽の演奏が行なわれる。
「ダジャン・アカ」を踊る美女
出し物は音楽に限らず、華やかな民族衣装をまとった女性が伝統舞踊「ダジャン・アカ」を披露する。が、舞踏の中に時おり「メインマシャー」と呼ばれる美しい女形が登場するのがまた面白い。
さらに、軽快なリズムに乗って歌うような掛け合いのジョークを繰り出す、男性の漫才グループもある。昔からミャンマー人は、こうして日常的な皮肉や社会への批判をさりげなくジョークに織り交ぜ、ワハハと笑って日ごろの鬱憤を解消しているということだ。ミャンマー語がわからなければ内容はさっぱりだが、楽しげに歌いしゃべくる漫才師たちと大ウケの観客たちを見ているだけでも愉快な気分になってくる。
さて、ステージのほかには屋台も大きな楽しみである。
在日ミャンマー人の団体というのはたくさんあるが、めいめいに屋台を出して、ミャンマーの家庭料理やお正月料理を売っている。少数民族の団体の屋台からは、その民族伝統の料理などが出される。この日はやや暑かったため、ビールや冷たいタピオカパフェが飛ぶように売れていた。
この水かけ祭り、同窓会のような一面も見逃せない。というのは、年中働き詰めで忙しい在日ミャンマー人にとって、このお祭りは旧友と再会する貴重な機会だからだ。日本に来て10年以上経つ人が、同郷の友人と日本で初めて再会、といったこともあるくらいだ。
桜のもと立ち並ぶミャンマー屋台
こちら主にミャンマー東部に住むシャン民族の屋台
ミャンマーのお正月菓子である白玉
もっとも、普段は忙しくて仲間に会えないのは私にとっても同じこと。気の置けないミャンマーつながりの仲間と、ミャンマー関連の話もそうでない話も、思う存分語らえるのがうれしい。
再会した仲間たちと、毎年同じように屋台のテントの下で、同じように缶ビールとミャンマー料理を口にしつつ、変わらぬおしゃべりをするためか、去年この場で会ったことがつい数日前のような気がしてしまう。
しかしその数日前のような1年で、結婚した人や子供ができた人がいたり、去年は来日したばかりだったのに、日本語がずっとうまくなってすっかり饒舌になった人がいたり。
それらは確実に月日の長さを感じさせ、まさに1年の節目を思わせる水かけ祭り。それはやはり「お正月祭り」で間違いないのである。