今、私はカナダの住民としてバンクーバーに住んでいます。
「世界一住み易い」と評価されたバンクーバーの街と初めて出会ったのは十数年前、バンフにスキーに行った帰りでした。自然あふれる広々した美しい景観・美味しい食べ物、そして高齢者や身障者に優しい人々を見て、この街の魅力に惹かれたのです。
それから、私は休暇が取れると、バンクーバーを旅するようになりました。冬のスキーシーズンだけでなく、初夏の季節、遅い春にも訊ねてみました。
ダウンタウンに先駆けて咲くウエストエンドの桜
ダウンタウンの街中の桜何度かバンクーバーを訪ねるうちに、ダウンタウンの西に位置するウエストエンドという街に来ると、故郷に帰ってきたような安らぎを感じるようになりました。ある年の春、スキー旅行の帰りに寄ったバンクーバーの街が、桜色に染まっているのに驚きました。桜は日本の花だと思い込んでいたので、外国でこんなにきれいな桜が咲くなんて思いもよりませんでした。漠然とここに住みたいと思っていた私、その桜に背中を押されたような気がして、日本に戻ると移民の申請をしたのです。
そして5年後に夢が叶い、移民として不安と期待に胸膨らませて、バンクーバーの地を踏んだのが2月の半ば、ウエストエンドの桜は咲き始めていました。私の背中を押してくれた桜に再び出会ったのです。
五輪カウントダウンボードがある広場バンクーバー移住5年目を迎えた今、「出会いの桜」は満開になりました。
また今年は、バンクーバーにとってオリンピックがあった特別な年。百数十年ぶりといわれる暖冬で、桜は例年より1カ月も早く咲き始め、オリンピック閉会式のころには、桜はほぼ満開、バンクーバーを訪れた多くの人々を楽しませたのです。
「出会いの桜」はオリンピックの時期に合わせて急いで咲いたような気がします。そしてこの桜が新たな出会いを生み、オリンピックで訪れた旅行者が、数年後にこの街に移民としてやって来るかも知れません。
5年前の私のように。