道なき道を行くインドで迎えた冬期休暇の間、パキスタン国境近くの城塞都市ジャイサルメールを訪れた。そこからさらにジープを飛ばして約1時間。砂漠に囲まれた小さな村、ラネラにお邪魔した。
可愛らしい平屋が立ち並ぶ村で、最初に出会ったのは砂で食器を洗う女性たち。「ナマステ・ジー」と両手を合わせて挨拶をすると、「外国人が来た!」と村中に伝わったようで、あっという間に人だかりが出来た。さっそく村人の家に招かれ、いろいろとおもてなしを受けたので、その様子をご紹介したいと思う。
砂で食器を洗う皆が私の一挙手一投足に注目する中、まずはスイーツをいただいた。なんでも、栄養をつけて冬を乗り切るための、冬ならではのお菓子だそうだ。
写真手前にあるのがシナモン味のクッキー、グリヤ。雰囲気としては、ソフトクッキーの柔らかさと甘さにシナモンをたっぷり加えたような味。色味といい、日本の柿に似たような味がする。
奥にあるのがベサンチェキ。ミルクと豆に砂糖を加え固めたものだそうで、バターの香りがこってりと濃厚! 両方ともかなり甘く、コーヒーや日本茶に合わせるとさぞかし美味しいだろうと思う。
冬のスイーツ
ラネラ村の人たち砂漠の真ん中で商店すらないラネラ村で、貴重であろうお菓子をいただいてばかりでは悪いので、皆におすそ分けすることにした。「はい、あーんして」と差し出す行為は全世界共通で、大人から子供までちゃんと「あーん」と食べてくれる。
恥ずかしがって食べない子は捕まえて食べさせたりで、言葉は通じずともこんな交流はとても楽しい。
チャパティをこねる様子この後ランチを出されたので、こちらもごちそうになった。なんでもこの近くにレストランはないから、ということで私を気遣って用意してくれたらしい。その心遣いがしみじみとありがたかった。
内容はインドのパンにあたるチャパティと、ナス、トマトの炒め物。
ここはひとつ皆を見習い、手でいただくことにする。本場インド式では、不浄の手と言われる左手は使わず、右手のみでチャパティをちぎり、炒め物をつまむようにしていただくのだが、これがなかなか難しい。油を使った炒め物はつるりと滑り、うまく食べられないでいる様子を、村人たちが面白そうに眺めている。
おもてなしを受けているのか、見世物になっているのかときどきわからなくなるが、彼らの瞳は一様に好奇心に溢れていて、温かかった。
人懐っこい子供たちに、極彩色のサリーを纏った女性たち。彼らから受けた、素朴なおもてなし。ラネラ村の訪問は今でも忘れられない、貴重なひとときとなった。