前週に負った相当な筋肉痛のほとぼりもようやく冷めた9月13日、伊豆・大仁城山にクライミングにでかけた。小川山1泊だったのが天気の都合で変更になったのだ。
前夜の雨で三島駅のベンチの上は半分以上水溜りができている。少し肌寒くもある。前週乗換えでミスをして20分ほどメンバーを待たせてしまい「偉そうじゃん!」とさっそくいじられた手前もあり、気がせいて急いだあまり1時間も早く到着した。
着ている薄手の長袖シャツの上に半そでを重ね着して、雨溜まりを避けてベンチのすみに腰かけたら、いつのまにか舟をこいでいた。何しろ前日は高校時代の還暦同期会で2次会、3次会とハシゴして、ついでに知人宅のパーティーにもちょい顔を出したものだから、帰宅したのは深夜。2時間の仮眠で起きて、慌ててパッキングして出かけてきた。
「ここか~下山でこけて怪我したとこだわ~」
現地とイメージが一致していなかったことに車を降りるまで気がつかなかった。やはりブランクは脳みそにエラーを招いている。http://asobist.txt-nifty.com/asobist/2008/12/post-5fcb.html
雨上がりと承知して、慎重にアプローチにあたる。例によって岩場に着いた時は青息吐息。いけません。まだ、いわば病み上がりに近い身で、前日に深飲みでクライミングに出かけるなど。ただでさえ、ついて歩くのにゼーハーなのに、なんだかゼーにもハーにも飲酒反応が出そうだし、1足歩くたびに毛穴から揮発しているようで。
大森さんのリードを眺めながらノロノロ準備。今回は確実なリード経験者が皆無なのだ。
岩も下の方は湿っぽい。ズル・ヌルで苦戦しそう。
ヤナ感じ。
誰もがお天気具合を知ってかゲレンデは混み混み。
午前中は南壁・アナザステップととんとん拍子の2本のスラブルート。5.9を2回戦、これはなんとかだったが、楽にできていいはずの5.8が途中でエンコしてしまった。細かいところに乗って踏ん張ろうとすると脚が大きくゆれて止まらない。生まれたてのバンビのように脚がワタワタしたのでは、次のホールドが上手くとれない。
数回落ちた末、ギブ。
「しょうがないよ、だんだん調子、取り戻せるよ」
「う・うん」
「飲みの余韻で」などとは口が裂けても言えず「加齢で過労?!」と「病み上がり」のせいにしておく。
「しばらく開いたから、手こずるよ」
午後からブルースカイ。5.9だが核心がハングしていて、背丈や筋力で攀じり方は異なった工夫と機転を要求される。「クライミングはセンス」を実感するルートだ。屋根上に乗り上げる際には股関節の稼動域と柔軟性も左右する。
1度はできたルート。大森さんに「よくなった」と言ってもらった誉れの核心。できずばなるまい。
他の4人にはあれこれアドバイスしていた大森さんの声が止まる。本日メンバーの最古参でルート経験者なのだから、言われなくてもやれてこそなのだ。
せいぜい頑張った。意地でもスルッといけるところを見せたくはあったが残念ながら「さすが、スルッといったね」にはならなかった。あああ、である。
核心で1度落ちた。言い訳はすまい。「ますますトレーニングしよう」内心決意した。
男性3人は始点・支点の設置やリードの練習が入ったが、ついに私には声がかからなかった。
それどころか…
「危なくてしょうがないや」
「す・す・すいませ~ん」
リード練習のビレーをしていて、体重差で引っ張られ、つい「おっとっと」で前に2、3歩出てしまった。大森さんに怒られた。面目ない。
きっと大森さんの「本調子にはまだまだ」という判断だったろう。赤いヌンチャクが日の目を見るのはもう少し先になりそうだ。
*用語説明
【スラブ】slab(英)
でこぼこの少ないのっぺりした一枚岩。フェイスよりもさらに堅くリス(小さな割れ目)も無いような大岩。
【スタンス】stance(英)
・岩場や雪上での足の構えかた。
・足場。本来は両足で立てる足がかりや、両手を放して立てる足場をいうが、片足だけしか立てない狭い足がかりにも使われる。
【ホールド】hold(英)
岩登で利用する手掛かり。手でつかんで体を保持できる、岩のデコボコ。
【核心】ルート中の一番難しい箇所。核心部。
参考:http://www.sunfield.ne.jp/~tkubota/yougo/
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