マイホームを奪われた男は、奪った男に雇われ、他人の家を奪い始める……。『アメイジング・スパイダーマン』のアンドリュー・ガーフィールドを主演に、『マン・オブ・スティール』のマイケル・シャノンの強烈な個性が対比を見せる。サブプライムローン問題とリーマン・ショックのあおりを受け、数百万人のアメリカ人が経験した社会問題に鋭く切り込む。
フロリダの一軒家に住むデニス(アンドリュー・ガーフィールド)は、息子と母と暮らすシングルファザー。建築現場で真面目に働いてきてはいるが、大不況が原因でその日の仕事もままならない。仕方なく住宅ローンを滞納せざるを得なくなったデニスのもとに、自宅と土地の明け渡しの強制執行が入る……。
公式サイト(http://dreamhome99-movie.com/about.php)の背景画像に映るのは、そのフロリダの家々を高空から撮った写真だ。同じような大きさの家、同じような色の屋根、同じような広さの庭。低所得者向けに安く早く作るため、その“既製品”的な風体になったのだろうと想起させる。
言うまでもなく、衣食住は人の暮らしの基本だ。それのどれかが欠ければ、誰も平穏に生きていくことができなくなる。血も涙も慈悲もなく、ましてや単なる書類の確認漏れという業務怠慢によってまで、突然にして「住」を奪われるその詳細な描写。自分の家族を守るために、ただその一心で、人としてやってはいけない一線を越えてしまうアンドリュー・ガーフィールド。“奪い方”を淡々と指示する不動産会社社長のマイケル・シャノン。ラスト、ある登場人物がガーフィールドに向ける表情。それがせめてもの救いだ。
マイケル・シャノンは、本作でゴールデングローブ賞の助演男優賞にノミネート。惜しくも受賞は逃したが、対抗馬がシルベスター・スタローンなのだから、致し方ないといえば致し方ない。
監督のラミン・バーラニは、イランからの移民を両親に持つ新進気鋭の40歳。まるで米粒に字を書くかのように、空気感も、画面には見えない塵の一つでさえもコントロールするかのように、すべてを完璧に仕上げてくる。新年早々褒めちぎってなんだが、ここまで完璧な映画もそうそうない。今後大注目の監督の一人だ。
監督・原案・脚本:ラミン・バーラニ『チェイス・ザ・ドリーム』
脚本:アミール・ナデリ
出演:
アンドリュー・ガーフィールド『アメイジング・スパイダーマン』
マイケル・シャノン『マン・オブ・スティール』
ローラ・ダーン『わたしに会うまでの 1600 キロ』
ノア・ロマックス『スマイル、アゲイン』
配給:アルバトロス・フィルム
公式HP:http://dreamhome99-movie.com
公開:1月30日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
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