札幌の奥座敷として知られる定山渓温泉……は、横目で見ながら通過。そこから車で10分もかからないその先に、お目当ての豊平峡温泉がございます。
たった一軒の日帰り温泉があるだけの温泉地……ですが、地中からくみ上げた温泉を直接浴槽にためて入る「完全温泉」は特筆に価します。一見、フツーのことのように思うかもしれませんが、沸かす・薄めるなどの手を一切加えていない温泉は、日本全国数え切れないほどある温泉の中でも数%しかないのだそうです。
北国の雪深き山々に囲まれた名湯の扉を開けたその先には……
そう! この温泉のウリは、100%源泉かけ流しの“鮮度”の高さにあるのです!!
…と、通常の温泉レポートであれば、ここから、泉質、効能、ロケーションなどの紹介となるのですが…
「口コミで選ぶ!“行ってよかった”日帰り温泉&スパ日本国内第1位」に選ばれた(2013年)この名湯へ訪れる人の中には、名湯よりも名品目当てという方が実に多くいらっしゃるのです。
その名品とは、“ナン”。そう、インドカレーのおともとして食卓に登場する平べったいパンのことであります。
館内にある“お食事処”では、十割そば、ジンギスカンといったご当地グルメをご堪能いただけます……だけでは止まらず、本格派! 北インドカリー&ナンをご賞味いたけるのであります。何をもって“本格派”かについては、窓ガラス越しに見える厨房に目を向けていただければ、一瞬にして納得! です。間違いなく! 本場からいらっしゃっていると思われる風貌の方々、テンポよく調理に励んでおられます。小麦粉を加えず、玉ねぎと数種類のスパイスをじっくり煮込んだ独自のカレールー(少し甘め)。“本場のお方“が生地を実に手際よく伸ばし蓋を開けて、側面のペタッと貼り付けていくその釜も、試行錯誤を重ねてようやくたどりついたという「特性セラミック釜」を使用しているのでございます。その釜で焼き上げたナン目当てで、入湯の前に食事へ直行する人が多いのが、この温泉の特徴のひとつ(中には食事のみという人も……)になっているのです。
空間に漂うカレーの香りに包まれながらのメニュー選びは即決が難しい
……ということで、地元っ子が豊平峡温泉を話題にするとき、インドカレー&ナンをはずした会話は成立しません。
ここで話を通常の温泉レポートに戻しますと……、
源泉は旧重曹泉の中性泉質で、肌をすべすべにするといわれる「美肌の湯」。一挙に200名入れる日本最大級の広さを誇る露天風呂は、大自然のパノラマの中で開放感たっぷり! 余談になりますが、10:00〜0:00(日曜祝日は9:00〜0:00)の中、平日の20時頃に入浴しますと、厨房で働く“本場の方々”の奥様やまだあどけない小さなお子様たちと遭遇することも。空いている日などは、エキゾチックな雰囲気の中、自分が外国人になったかような錯覚に陥ることもございます。
特製釜で次々とナンを焼き上げる“本場の方”
ご当地温泉にご当地グルメ……ならぬインドカレー&名物ナン。札幌市内からは無料送迎バスも運行されていますので、旅の疲れを感じ始めたらスケジュールに組み込んでみるのも一興かもしれませぬ。
【豊平峡温泉】http://www.hoheikyo.co.jp/
雪景色を眺めながらいただく“暑い国”のご馳走