モツ焼き屋とロンドン・パブの2軒をハシゴした翌日。布団から出て前夜着ていたパーカーを手にとってそのあまりの「居酒屋臭」に顔をしかめて洗濯機に放り込み、コーヒーを淹れた。
終了の音を聞いて、かごに入れて運んだ洗濯物をベランダで干していると隣家の屋根に立ったTVアンテナに、ふつうなら群れで暮らすはずの椋鳥が一羽だけとまってキュルキュルと冷たい風の吹く空に声を響かせている。冬が来たなぁ。
冬になると虫がつかなくなるのでベランダ野菜の栽培がしやすくなると妻は言う。この季節、マーケットに並ぶ野菜が驚くほど安くなることもあって、がぜん野菜を調理する意欲が湧いてきた。今回の「酔っぱライ部」はそんな野菜料理のレシピをいくつかご紹介。
今回の一品はお江戸日本橋で出会った「だしドリンク」。
だし物が美味しい季節ですよね
北海道産の大根が一本50円。こんなに安くて大丈夫なのかといぶかりつつカゴに入れ、店に入って物色すると、鹿児島産の鶏スペアリブが安くなっている。「鶏大根」を作るぞ。
安かった大根は半分を一気に使う。煮物にする分はシッポの方から。葉に近い方はこの時期サンマの塩焼きに添えたりなめこおろしにするのでとっておく。厚さ2cmくらいに切って厚めに皮を剥き、太いところは十文字の四半分に、そうでもないところはそのままか半分に切って食べやすい大きさにする。
大ぶりの鍋に湯を沸かし、グラグラしたところへ大根を入れる。ダシ、酒、醤油、砂糖、塩を入れて好みの味にしたら鶏のリブを加える。一度沸騰させたあと弱火にし、落としぶたをしてそのまま小一時間ほど煮込む。アクを取ったりもしない。
油揚げと一緒に煮物にするときは、大根だけスッと串が通るくらいまで茹でてから一度水にさらして大根独特の臭みを抜くけれど、鶏肉と煮込むときにはその工程は省いていい。
時間があれば火から下ろしてしばらく放置すると、味がこっくりと鶏にしみてさらにおいしくなる。鶏のリブは口の中へ入れるとほろほろと崩れて甘辛い。鶏の匂いが気になる人はおろし生姜をのせて食べるとさわやかになります。
鶏大根
鶏大根を煮込んでいる間に小松菜のおひたしを作る。普通に湯がいて醤油をかけてもいいけれど、葉に厚みがあってちょっと良さそうな小松菜なのでちょっと違うことをしてみたくなった。
鍋に湯を沸かし、塩をひとつまみ入れる。ざっと洗って水を切った小松菜を根本のほうから湯に入れ、数十秒たったら引き上げて手で触り、柔らかくなっていれば箸で全体を湯に浸していく。
葉の部分がしんなりしたら鍋から上げ、ざるの上に置く。水にさらしたりしない。そんな風にして少量ずつ順繰りに湯がいた小松菜はざるにそのまま置いておく。
小鍋に半カップほどの水を入れて火にかけ、ダシ、酒、味醂、塩と醤油少々を加えて味を調えてかけ汁を作る。沸騰したところへ油揚げ1枚を短冊に切って入れ、弱火にして5分ほど煮る。
粗熱が取れた小松菜は5cm幅くらいに切って水気を絞り、皿に盛りつけたところへ油揚げを載せ、汁をかけ回す。熱々を食べても冷めてからでもおいしい一品です。
小松菜と油揚げの変わりおひたし
洗濯機を回しながらコーヒーを飲んでいるとき、数日前に行った居酒屋で仕上げに、と注文した「塩むすび」についてきた「野菜の浅漬け」のことを思い出した。その漬かりすぎずハリハリとしておいしいその浅漬けの作り方について、妻と話していたのでやってみるか、と朝仕込んておいた。
ボウルに市販の「白だし」をいれて水を加え、野菜からも水分が出ることを考慮しながらほんの少し濃いめの漬け汁を作る。
漬け汁をビニールの保存袋に移してそこへ好みの野菜を入れていく。この日は野菜室にあったキャベツの葉を4枚。食べやすい大きさに切って漬け汁の中へ入れたら空気を抜きつつ封をし、そのまま冷蔵庫に1日置いておいた。
キャベツを使った浅漬け
食べてみる。ハリハリ。旨いけど、改善の余地がまだありそうだ。次はセロリでやってみる。もしかしたら一度お湯を沸かして塩を溶かした塩水を作り、冷ましたそれに漬ける方がいいかもしれない。ハーブを入れてもいいだろう。
その野菜使いの上手な居酒屋の「お通し」は意外なことに大ぶりのボウル一杯に入った野菜サラダだった。主役は水菜でこれもシャキシャキ。こちらもマネをしてみる。
ベランダで採れた野菜に加えて水菜は一把の半分を5cm程度に切って、洗ったあとによく水気を切っておく。
数種の葉が混じっているのでボウルに移してざっと混ぜて均等にし、ごま油をかけて全体に回るように手で和える。
フランス産、と書いてある精製塩はサラサラとしていてしかもボトルが大きくて使いやすい。少し高級な日本製の塩は味がフクザツでとてもおいしいけれど、たいていがちょっとシットリしているので、サラダなどに使うとき味が均等になりにくいところがある。
こういうものを作るときに使うサラサラした塩が欲しくて探していたら、輸入食料品店で安く売っているのを見つけて買ってきたもので、それを塩辛くなりすぎないように注意してボウルの上からサッと振った。白胡椒も振る。
このサラダの新味はビネガーを使っていないこと。中華風サラダを作るときにはここへ「醤油・黒酢・砂糖」を合わせてよくかき混ぜたものをかけるのだが、この店のサラダがごま油と塩だけだったことが新鮮で、それで作ってみたくなったのだった。
ザックリと合わせ、白胡麻を炒ってあたり鉢ですったものとチリメンジャコをちらして完成。
ジャコと胡麻は僕のアイデア。店で食べたものにはなにか白いツブツブしたものがちらしてあったけれどその正体はわからず終いだった。そのとき聞けば良かったのに目の前のビールを飲むのに気をとられて聞くのを忘れたのだ。
カッテージチーズではなかったかと見当はつけているものの、もういちど行くことがあったら聞いてみるつもり。問題は再訪することがあるかどうかだが。
水菜のごま塩サラダ
そういえば「あたり鉢」というのは大阪の言葉らしい。「すり鉢」の「する」を嫌って「あたり」と言ったそうで、さすが商人の街・大阪ならでは。しかし「商人の街」って言われるの、あまり大阪の人は好きじゃないんじゃないかな、なんてことを思いつつ、焼酎のロックを飲む夜だった。
てなわけでレシピ三昧のかんたんレシピは「だしドリンク」。じつは日本橋の鰹節専門店で見つけた一杯100円の「だしドリンク」があまりにおいしくて、それを家で再現してみたのがこれ。もちろん本家本元家元元祖にはかなわないけれど、簡単でおいしい。お酒のチェイサーとしても秀逸です。
じつは妻が参加したイベントのヘルプで三日間通った日本橋で出会ったのがこの「だしドリンク」。あまりにおいしいので毎日飲んでいたんだけど、2日目の夜に「味を忘れないうちに」と家で作ってみたのが今回のレシピです。翌日、お店へドリンクを買いに行ったとき、「こうやって作ってみたんだけど、けっこうおいしかったっす!」と言ったら「へえ! それはまだやってみたことない、やってみます!」と店のお姉さんに言われました。もしかして実用化したり……しないだろうな。店で出してる「合わせだしドリンク」の方が断然おいしいもの。もし行かれることありましたらぜひトライしてみてください。お勧めです。
てなわけでレシピ満載の今回はこの辺で。次回は12月2日更新の予定です。
【Panjaめも】
●だしドリンクを見つけたのはこちら「にんべん・日本橋だし場 」
店名もメニューも直球(笑)
●私、あの「まぐまぐ」でメールマガジンを発行しております。
「モリモト・パンジャのおいしい遊び 」
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