高校野球甲子園大会も順調に日程をこなして決勝戦を迎える頃、ようやく猛暑の勢いも終焉の気配を感じさせて、今年の夏も終わりである。
とはいえまだ8月。仕事場へ向かう朝の9時過ぎに住宅街を歩いていると、小学生が水着の入っていると思しきビニールのバッグをぶら下げてヒマそうに歩いているのを見ると、「おお、まだ夏休みなんだなぁ」ということが見て取れる。
今年の小学生の夏休みはどうだったんでしょう。僕が小学生の身分だった50年前の夏休みといえば、今と違って外国旅行など夢のまた夢、せいぜいが2泊3日の温泉旅行くらいが関の山。
あとの日々は宿題もやる気がしないし、小学校の「プール開放」が終わってしまうと、ただただヒマでボ〜ッと鼻くそをほじりながら漫画を読んだり、駄菓子屋で買い食いをするくらいの楽しみしかなかったような覚えがある。
今になって考えるとあの「ただただなにもせず、ボ〜ッと暮らす日々」というのはあんがい子供に必要な気がするのは、この頃の子供は、やれ「スタンプラリー」だ、「ウルトラマン・フェスティバル」だと、やけに忙しそうで、あの歳からあんなことをしなきゃならないのは大変だなぁ、となんだか気の毒な気がしてしまうからだ。
そんな昨今、子供に人気が高いのは「妖怪ウォッチ」とかいうゲームとその周辺グッズだそうで、時計なんだかゲームなんだか知らないけれど、親も一緒になってグッズ探しに奔走しているらしい。その功罪については内容や賞品についての知識がまったくないので触れないけれど、気になったのはその名前である。
「妖怪ウォッチ」という名前を聞いて、子供を含む青少年にウケる、あるいは訴求する商品やアイテム、コンテンツの名称として「〜ッチ」というのがヤケに多いのではないか、とつい考えてしまったのであります。
今日は爽やかクレソンとベーコンを使った文字通り「クレソンとベーコンのサラダ」をどうぞ
曰く
・タマゴッチ(ゲーム)
・みなしごハッチ(漫画)
・タッチ(漫画)
・ピタゴラスイッチ(TV番組)
・マッチ(タレント)
……ちょっと思いだしただけでもこれだけある。 省略形を入れてもよければ例の幻のヘビ「ツチノコ」のキャラクター「ツッチー」なんてのもあるし、調べればまだまだ出てきそうだ。
聞くところによれば「アッチ〜」だか「ウッチー」だかという愛称を持つ女子アナもいるそうだし、そういえば野村監督の奥方・沙知代さんも「サッチー」などと呼ばれて親しまれて(?)いた。
これらのことを並列に並べて眺めてみると、人やアイテム、コンテンツの名称の末尾に「ッチ」をつける行為は、ひょっとして「意図的に行なわれている」のではないかという気がしてくる。つまりより「存在に親しみを持たせるためのアイテム」として「ッチ」が使われているのではないか、と思ったのである。
元来、大衆(と表現していいかどうかわからないが、他に呼びようがないのでこの単語を使うが)に親しみを持たせる呼称の語尾としては「ちゃん」があった。古くは明治・大正期に人気の高かった映画俳優・尾上松之助の「目玉のまっちゃん」に始まり、宝塚の女優が「ツレちゃん(鳳蘭)」、「デコちゃん(高峰秀子)」などと呼ばれて親しまれたことは、ちょっと歳の行った人なら知っていることだろう。
そしてこの「ちゃん」がより身近なものとして形を変えた「っち」を使うようになったきっかけは、僕の推測が間違っていなければ「モンチッチ」だったのではないかと思ったのである。
モンチッチ。Wikipediaによれば東京・葛飾区の人形メーカー・セキグチが昭和47年に発売したのが最初と書いてある。
昭和47年というと僕はまだ高校生。それ以前に「〜ッチ」と呼ばれて親しまれたコンテンツはどうも無いように思うのだ。
1981年(昭56年)に「なんとなくクリスタル」でデビューした 田中康夫氏が後に「東京ベログリ日記」などでスチュワーデスを「スッチー」と短縮して親しみを持たせたのはさらにそれより後で、昭和47年以前に「ッチ」がついた名称で記憶があるのはリッチー・ブラックモアくらいのものだ(冗談です)。
そう考えると、大衆の「愛玩物」としての呼称に「ッチ」を使うようになるきっかけとなったあの「モンチッチ」は「商品名」の歴史の中では一つのエポック・メーキングな名称だったのではないかという気がしてくる。
これからもまだまだ商品名やタレントの愛称として「ッチ」が使われることだろう。自分に「ッチ」という愛称が冠せられたとき、自分はあのお猿さんの人形の系譜に入るということを意識するのはどういう気分なんだろう? と思う。僕に「〜ッチ」という呼び名がつくことはないだろうから、想像もできないのだが。
考えてみると「妖怪ウォッチ」の場合は「ウォッチ」自体がひとつの単語だから、なにか特別な吸引力を持たせようとして意図的につけたわけではないのかもしれない。
ただそれとは別に「ッチ」という語感にはなにか純粋に「親しみやすい磁力」のようなものがある、結果的にそのひとつの証左になっているのではないか、とも思う。
しかるに、なにか新商品の名前や愛称を考えるとき、その選択肢の中に「「ッチ」が語尾に来る候補を考案するのはひとつの有効な手段なのではないか、などと夏休みのボ?ッとした小学生のような頭で考えた、戯れ言の一席はこの辺で。
と、ここまで書いてきて昭和47年以前、現皇后・美智子妃の結婚当初、「ミッチー・ブーム」というのが合ったことを思いだした。でもこの場合は「ッチ」までが名前だからちょっと違うんじゃないか、と適当にごまかした今回の「かんたんレシピ」は「クレソンとベーコンのサラダ」を夏の終わりに。ま、ホントにかんたんすぎてレシピってほどのもんじゃないですけどね。でもおいしいんですよ〜。
というわけで夏の終わりを惜別してかの守屋浩さんの名曲を。
♪ ぼーくーは 泣いちっち ひ〜とり〜で 泣いちっち ♪
あれ? まだあったね。ふうむ。「ッチの考古学」、まだ続くかも。次回は9月9日更新の予定です。
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