開催決定は昨年の9月なのだから偶然でしかない話なのだが、東京でオリンピックが開催される2020年までに首都圏の鉄道事情は大きく変わりそうである。
当コーナーでもお伝えした北陸新幹線は15年春に開業予定であり、その翌年には北海道新幹線も青森(新青森)―函館(新函館)で産声を上げる予定だ。またオリンピック開催に向けて羽田と成田を繋ぐ新路線の計画も促進される可能性が高く、山手線新駅も2019年には開業させたい意向と聞く。はたして“芝浜駅”にはなるのだろうか。ならないだろうなあ、“高輪”とかに落ち着くんだろうなあ。
開業ばかりでなく廃止路線もある。“上野発の夜行列車”である寝台特急「あけぼの」が今年3月のダイヤ改正で姿を消し、あの「北斗星」も北海道新幹線の開業とともに廃止が検討されている。青い牽引車の寝台列車“ブルートレイン”絶滅の危機なのだが、どうか文化的にも残していただきたいのだが……なお北斗星に関しましては『豪華鉄道旅行 』という本もお読みになっていただくといいかと思います。私が書いています。宣伝でした(笑)。
終点の上野駅に入線する宇都宮線。
来春からは東京駅いや、もっと遠くへ?さて、新幹線の開業やブルートレイン廃止!? という大駒に隠れてしまっているが、昨年12月に40年越しの“再開”となる新路線の愛称がJR東日本から発表された。
「上野東京ライン」
現在、上野駅から運行されている東北本線(宇都宮線、高崎線、常磐線)を東京駅まで延伸する路線であり、15年春に開業を予定している。
元々のところ、東北本線の起点は東京駅なのだが、東北新幹線(上越新幹線なども含む)の施設敷設に伴い、73年春に定期運行列車の東京駅乗り入れが廃止となり、一部団体列車などの乗り入れも83年1月で終了。これによって上野駅―東京駅の東北本線の乗り入れは全廃となっていた。ちなみに、東北新幹線の大宮駅以南への延伸には線路の敷設などに山ほど難問があり、そのエピソードだけで1冊の本になるほどである。その概略はまたお伝えするとして、既存の路線を潰してまでしないと引けなかったわけである。
東北本線の東京駅乗り入れが無くなって、逆に出てきたのが朝のラッシュ問題だった。東京駅以南には山手線のほかに京浜東北線・根岸線があり、さらにそこを平行して東海道本線や横須賀線の中距離列車が走っている。つまり多少ではあっても適度に分散された乗車率にはなるのだが、東北本線の利用者の場合、上野駅以南に通勤通学している利用者は全員上野で山手線か京浜東北線・根岸線に乗り換えることになる。ここでとんでもない混雑が生まれることになり、平成22年度にJR東日本が発表した乗車率では上野駅→御徒町駅の山手線が201%で、京浜東北線・根岸線でも195%になっている。通勤車両の定員は「全座席数+全吊革数+扉前に立っているであろう数人」とされているが、その倍の利用者が詰め込まれているのである。
沿線である埼玉県などから、この状況を改善するべく東北本線の東京駅への乗り入れ復活が要望され、運輸省(当時)などでも審議された結果、02年に工事計画が決定。08年より着工されて、いよいよ来年春の開業が迫ってきた――それが「上野東京ライン」なのである。
湘南新宿ラインも「上野東京ライン」開業でより快適に?開業後は前記のラッシュ緩和もちろん、東京駅での発着に留まらない、東海道本線や横須賀線への乗り入れも期待されている。……いや、期待どころか既定路線とされており、これによりたとえば小田原駅から水戸駅(常磐線)まで乗り替えなしで辿り着くことなどもできるようになる。現在も宇都宮線と高崎線には「湘南新宿ライン」で東海道本線、横須賀線が繋がっているが、新宿駅や渋谷駅を通るか(湘南新宿ライン)、品川駅や東京駅を通るか(上野東京ライン)で、ここでも混雑の緩和が計れそうだ。また、冒頭に書いた山手線新駅構想は、これまで「品川車両センター」に留めておいた東海道線の車両を、東北本線と繋がることでそちらに留めておけるようになるために空き地ができ、そこが新駅の用地になる。こういったメリットもあるわけだ。
まあいいことばかりを書いてみたが、路線が長くなるというのは事故発生時などに影響が広範囲に渡るということでもある。“南関東縦断ライン”として昨春に繋がった東急東横線(みなとみらい線)と東京メトロ副都心線、さらに西武線と東武線の連合軍はヒマさえあれば遅れやら直通運転中止なんてことになっている(それは言いすぎ)。開業はまだまだ先の来年春ではあるが、「上野東京ライン」の安全を今からお祈りします。