香港のローカル飲茶、蓮香楼に挑む朝

20121112_bannar.jpg 香港ではホテルから少し歩くだけで、朝から安くて美味いものにありつけるのだから、散歩がてらふらふら出歩いてしまう。香港島の上環(ションワン)のホテルに泊まったときのこと、すぐ近くに飲茶で有名と聞いた蓮香楼の大きなネオンサインがあった。行ってみたい、食べてみたい!
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古いビルの1階にある蓮香楼。妙に見慣れた看板もありますね
ホテルから坂を降りて角にある蓮香楼へ向かうと、店の前には新聞を販売するニューススタンドがあった。なるほど、蓮香楼の客向けなのか。入り口は薄暗く、恐ろしくもキレイとはいえないし、観光客が気軽に入れる雰囲気ではない。それでも入り口で「中へ入って」とい言われてドキドキしながら進んでいくと、甲高いしゃべり声がどんどん大きくなってきた。食堂の中は蛍光灯の白い明かりと、配管むき出し地下室のようだが、テーブルは客でいっぱい。メインの客層は老人と近所で働く男たちというところか。空いている席を自分で見つけて相席で座るらしいが、なんだか場違いなところに来たようで凍りついてしまった。私はキョロキョロと空いている席を探したが、3人一緒にかけられる席はなく、雰囲気にもついていけなくて撤収することにした。
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このローカルの雰囲気、ちょっと気軽には入れません
やや無謀なのは承知でもどうしてもあきらめられないので、翌朝再チャレンジした。座席を探していると、客のオバちゃんに「ここに座りなさい」と勧められて座席を確保できた。丸テーブルを客が"キツキツ状態"で囲んでいる。席について少し戸惑っていたら、同じテーブルのオバちゃんが店員にお茶を持ってくるよう頼んでくれた。お茶が来たらまずテーブルにある陶器のボウルを使って湯のみを洗えというので、中国茶を習っていた私は慣れた手つきで"洗杯"した。

蓮香楼の飲茶は香港でも少なくなったワゴン式だ。しかしゆったりとテーブルを回るものではなく、椅子の足に阻まれてなかなかワゴンが通れない。そうこうする間にワゴンに人が集まり、点心を取っていく半ばセルフ方式になっている。同じテーブルのオバちゃんたちが声をあげてワゴンを呼び寄せてくれるが、それでは間に合わず私もワゴンまで足を伸ばして好きな点心を取りに行った。オバちゃんたちはジェスチャーまじりの広東語で話し、こちらは雰囲気をつかんで北京語で答える。逆にこちらが北京語で聞くと、相手は広東語で答えるという不思議なコミュニケーションが成立していた。点心は、ローカルの客を相手にしているだけに大ぶりで食べごたえがあり、いうまでもなくうまい。しかしバランスを考えて取らないと、わずかの点心でお腹がいっぱいになってしまう。
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ごま団子も特大級
店内の客を観察していると、一人でふらっとやってきて、新聞を広げながらお茶をのんで点心を一つ取ってつまむ。同じテーブルと会話をし、また気が向けばワゴンからまたひとつ点心を取る。おしゃべりで騒がしくともマイペースであり、人のつながりがある時間だ。私たちのような観光客を温かく迎えてくれる寛容さも長年培ってきた味であり、迎えられた側は一生忘れることはない。