【鉄道ウンチク】「『クハ』とか『キハ』とかってなんですか?(半笑い)」――車両番号の謎

とりあえず「まるっと鉄道に関すること」という括りにしておけば、鉄道が出てくる映画や小説に関してでもいいし、たとえアルバイトでも駅員になっていたときの話でもいい……いろいろなことが書けるなあと考えていたこの2週間。で、挨拶に続く実質一発目に選んだのは「ウンチク」である。おいおい。いや、鉄道のことに対してすごく詳しい、いや、ちょっと詳しい(笑)となると、必ずと言っていいほど聞かれるこの質問にお答えしようと思った次第で。

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この京浜東北線の車両に付いている車両番号は、
「クハE232-1071」
あの、『クハ』とか『キハ』とかってなんなんですか?(半笑い)

鉄道の車体に付記されている「車両番号」はいったい何を表しているか、である。それにしてもこの質問を口にする人の多くが半笑いなのはなぜだろうか(笑)。
まあそれはともかく、車両番号について。まずは写真をご覧ください。なお、これはJR東日本の車両で、今回はこれを基に解説していくが、他社線はこれと同様の場合もあれば(JR各社は比較的同様)独自のものもあるので、あくまでもJR東日本版としてご覧ください。また、日本で線路の上を走っている車両すべてで分類がなされているが、今回は「電車」(と「気動車」)のみを取り上げる。新幹線などはまた別の機会に。

写真の車両番号は「クハE232-1071」。これを細分化するとこうなる。
ク・ハ・E・2・3・2・1071
つまりここには7個の情報が入っていることになる。では先頭から見ていこう。

<ク>
ここは車両の種類を表している。「ク」は制御車……つまり運転席がある車両で、途中切り離しなどがなければ基本的には先頭か最後にある。「ク」以外は……
モ……モーターが付いていて、運転席がない車両
クモ……モーターも運転席もある車両
サ……モーターも運転席もない車両。4両編成の2両目などでよく目にする
以上が付いていれば「電車」だが、この四つではなく「キ」の場合は「気動車」となる。
なお、気動車とは電力でエンジンを動かして走る車両で、電車は電力でモーターを回して走る車両である。

<ハ>
その車両の用途を示している。「ハ」は在来線も自由席も指定席もひっくるめて“普通車”と呼ばれる用途である。
ロ……グリーン車に付けられる
ネ……寝台車。これのみ「ハネ」、「ロネ」とハとロでセットになる
シ……食堂車。東京から札幌へ向かう特急「カシオペア」、「北斗星」などで現役の記号
ヤ……訓練用など、会社使用の車両に付けられる

<E>
“EAST”の「E」。JR東日本の車両ですよ、ということだが、JR各社で必ず付いているわけではない

<2>
電気が流れる仕組みには、理科の授業で習ったとおり「直流」と「交流」がある。この「2」はその車両がどちらに対応しているかの区分で、2は直流で送電される線路上しか走れない。直流でも交流でも、どちらでも走れる“交直流”もある。
1〜3……直流。交流で送電される線路上は走れない
4〜6……交直流。どちらでも走れる
7〜9……交流。直流で送電される線路上は走れない

<3>
電車の種別を表している。たとえば山手線の車両が特急「あずさ」として使用されることはない、そういう区分である。「3」は“通勤型、近郊型”と呼ばれている。
0〜3……通勤型、近郊型
5、8……特急型電車
9……実験用車両など
ちなみに以前は6、7で“急行型”という区分があったが、現在は使用されていない。

<2>
ここまでの「クハE23」という車両タイプのバージョン「2」、という意味を持っている。また改良されたら3、という案配だ。

<1071>
「クハE232」において“1071台目に製造”であるとか、車両配置エリアを「首都圏=1000番台」などと裁量した際の71台目に製造など、製造台数に関する
数字。現実として1000台を作るなんてことは考えられないそうなので、おそらく前2桁や3桁までは区分番号と思われる。

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隣の車両に行ってみた。こちらは「モハE232-1271」。
モーターが付いている車両、ですね
以上である。ふう。そんなわけでこの「クハE232-1071」は、以下のような車両だと読みとることができる。

★JR東日本所有(E)の直流区間のみ走れる(2)近郊型(3)普通列車(ハ)の運転席付き車両(ク)のバージョン2(2)である。製造は1071台目や1000番台の運営車両として71台目、もしくは1070番台として1台目などと想像される(1071)

ちなみに蒸気機関車の“デゴイチ”などというのも「D51」という車両番号から来ているわけだが、前記したようにそれはまた改めて。