不肖私が担当していた『憎いウンチクshow』が先月末に終了する際、「望まれると望まれないとに関わらず“アンコール”は用意してある」と記しておいた。そしていざアンコールでの再登場は、へヴィメタルのコンサートだったはずが突然詩吟を唸り始めたほどの変貌を遂げ、隔週金曜日に様々な切り口で鉄道に関する情報をお届けする『鉄、この部屋』である。
鉄道好きのテーマとして一般的によく語られる、「乗るのが好き」とか「撮るのが好き」とか「時刻表が好き」などのほか、「鉄分(=鉄道好き)豊富な○○」や「鉄道がテーマの店」、はたまた「ウンチク」の場合もあるかもしれない。とにかく鉄道に関することならなんでもアリで取り上げていく所存なので、鉄道が好きな人もそうでない人も、よろしくご愛顧ください。
では、なぜこんなコーナーが立ち上がったのか。ひとことで表すとこうなる。
「私は鉄道が好きだ」、以上。
『憎いウンチクshow』では全ウンチクの1割以上となる15個もの“鉄道ウンチク”を書いており、読んでいただいていれば薄々勘付かれていた方もいるかもしれないが、私はけっこうな鉄道好きである。ここで少し触れているが、「休みでヒマだから電車に乗る」ということをしたりする。隣の駅まで3分のところ、乗り替え時間も含めて5時間以上掛けて行き、しかも130円しか払わない(ルール違反ではない)。これは鉄道好きと言っていいだろう、たぶん。
こんなことをしているとなると、ずいぶん小さな時分から鉄道好きだったと普通思われるのだろうが、私の“デビュー”は遅い。確かに小さいころから自動車よりは電車に乗る機会が多かったし、普通免許も持っていないので通勤通学出張旅行はほとんど鉄道でまれに飛行機だったが、移動手段という認識でしかなかった。別に模型も集めていなければ部活に入るなんてこともしていない。
それが転機となったのが5年前。諸事情からなにかアルバイトをしなければならなくなり、たまたまJR東日本の駅で「駅案内業務アルバイト」のポスターを目撃した。「鉄道ならよく乗るし、指定席とかも券売機で買うくらいはできるし……」と軽い気持ちで応募してみたところ、都内山手線の某駅に採用された。『券売機前での案内業務』と聞き、横浜市内のいくつかの駅で探してみたところ、駅員さんとは別のウインドブレーカーを羽織った職員さんが案内をしている。某駅からの案内でも「制服は用意しますので……」と聞いていたので「アレか……」と思いながら、初出勤をしてみると、そこに用意されていたのは紛れもなくJR東日本の駅員さんが着ている制服、制帽だった(これ、本当の鉄道マニアから「アルバイトでも制服を着られるんですか!?」と聞かれたことがある。着られますからぜひやってみてください)。
この格好になれます。
これは冬服、春秋と夏服ももちろんのことでおいおいこれで駅にいたらアルバイトも社員も見た目には変わらないぞ、そう思っていると、仕事内容の説明もそこそこに「ではあとは実践して慣れてもらいましょう」と、ポーンときっぷ売り場前に出されてしまった。ものの数分もしないうちに、きっぷの買い方から使い方、道案内までドンドンとお客さんがやってくる。そして知らないことの多さに否が応にも気が付かされる。
おいこれヤバいよ、そう思ったアルバイト駅員は、持たされている時刻表をヒマなときに読み漁り、駅員さんに話を聞いて勉強した。それでいろいろと鉄道の上手な利用方法や不思議なことに気が付く。結局勤務したのは10カ月余り、たぶんまだ山のように全然知らないこともあるのだけれども、この経験が私を「鉄道好き」というところまで引き上げたのは間違いない。
「すみません、いま(午後2時)から今日中に京都まで、東海道線だけで行くことは可能でしょうかね?」
券売機にはそんな機能は入っていないし、まさか携帯電話を持ってきて検索するわけにもいかない。質問をしたおじさんと二人で時刻表を辿っていくと、今日中は難しいが終電までには辿り着くルートが見つかった——こんな経験してれば、好き、というか興味も持ちますよ(笑)。
ついこういうものを買ってしまう。
0系新幹線型のお弁当こんなであってもまだ、私は「鉄道好きと言っていいだろう、たぶん」というくらいだと思っている。だってテレビとか見ているとスゴイじゃない、ホンモノの人(笑)。そんな人たちに追いつこうとも思わないけれども、私がひょんな形で好きになってしまった鉄道を、ウンチクだけでなくいろいろな形で見つめて行ければと思います。
鉄道が好きというところから、“鉄”へ。私は“鉄”になりたい——誰だもうなってると思ったのは。