明日3月17日はJRグループのダイヤ改正が行なわれる。先週の東海道・山陽新幹線全通の話も3月10日(1975年)だったように、国鉄時代から全面ダイヤ改正はこの時期に実施されており、そこでは青函トンネルの運用開始(88年3月13日)であるとか、成田エクスプレスの就航(91年3月19日)などの大事業がちりばめられている。それ故、来年も当コーナーが存続していれば、3月半ばには必ず鉄道ウンチクが登場することだろう。まあ時期を選ばず登場頻度が高いのも間違いないのだが(笑)。
今回ももちろん鉄道のおはなし。とは言ってもダイヤ改正とは関係がないのであしからず。
JR鶴見線の海芝浦駅
とにかく乗るのが好き、など一部の好事家を除き、一般的に電車に乗る理由とは何か。それは「目的地の最寄り駅で降り、改札を出てその場へ行く」である。基本的には電車を降りるだけでは成立しない。いわゆる“エキナカ”施設などを使うのが目的でなければ、駅を出るまでが電車に乗る目的だ。
何を当たり前な、という話だが、世の中にはその目的が成立しない駅がある。かつて“路線図に存在しない駅”として注目した貨物駅、こちらも……と言うまでもなく、貨物列車には乗車すらできない。営業車両が停車するれっきとした旅客駅ながら、乗客は全員降りられても、駅を出られるのはほんの一部でしかない、そんな駅が実は神奈川県横浜市にある。
その駅とは「JR海芝浦駅」。JR鶴見駅を出発する鶴見線の海芝浦支線の終点であるこの駅は、彼の大企業・東芝の京浜事業所の敷地内(!)にあり、改札を出るとそこは東芝の所有地であることから、従業員や通行証を持った関係者以外が出場するといわゆる“不法侵入”になってしまう。突然の用事であらかじめの許可なく訪問した場合なども、事業所の正門があるお隣のJR新芝浦駅を利用するように案内されるので、本当に一部の人間のみが“降りて出る”という電車の目的を果たせる駅なのである。
海芝浦駅からの夜景。
左が鶴見つばさ橋、右奥が横浜ベイブリッジ
ただこの海芝浦駅、東京湾に面していることから、ホーム上から京浜工業地帯の工場群や横浜ベイブリッジ、鶴見つばさ橋、横浜港の花火大会、そして初日の出などを一面の海とともに眺めることができる。また、駅から出場しない形で東芝が「海芝公園」という公園を開園しており、デートコースや憩いの場として注目のスポットだったりする。
鶴見線自体もかなりのマイナー路線。そんな電車に飛び乗って、一面海の出られない駅を訪ねる、そんな楽しみがあってもいいのではないだろうか。ただし、こちらも以前紹介したことだが、電車は駅から出場しなくても目的を果たした時点で乗車終了。鶴見駅から海芝浦駅までの運賃150円、往復分で300円が正しい運賃である。