ミュージシャンの襲名考――おもしろくて酒、進みすぎ(笑)

以前こちらでも書いた「テデスキ・トラックス・バンド」が渋谷公会堂で行なった日本最終公演に先週、行ってきました。
ほぼ定刻どおりに始まるやいなや空前絶後、丁々発止、茫然自失のライブに圧倒されたこれから長く記憶に残るであろう、2時間半の貴重にして宝石のような体験。
あまりこの手の音楽にそう興味のない方もおられようかと思うので、つまびらかに詳細を書くことは控えますが、終演した瞬間、心の底から「ライブは楽しい!」と深く感動することしきり。イヤーすごかった。参った。あまり楽しかったせいで、その後に行った居酒屋でベロベロになるまでしたたか呑んでしまったのは私個人の不徳の致すところであります。すいません。

ところでいわゆる夫婦(めおと)ギタリストによるこのバンド。夫のデレク・トラックスさんはオールマン・ブラザース・バンドのオリジナル・メンバーとして今もドラマーとして活動するブッチ・トラックスという人の甥です。
ドラムとギター、演奏する楽器こそ違え、たしかに今回のライブでも音楽性が通底している様子はありありで、なにより本人が一時期オールマンのメンバーとして参加したこともある(そういえば「ツイン・リード+ツイン・ドラム」という点でもこのふたつのバンドは共通している)くらいであります。
そこで終演後足を運んだ居酒屋で芋焼酎「招き猫」を呑みながら考えたのは、やはりこの「血」というか「遺伝子」というか、そういうものがこのロックの世界にもあるんではないだろうか、ということ。むろん育った環境に培われるところもあるんでしょうが、それにしても「血は争えない」って感じは否めません。

そういえば。先日テレビで見た、かのプログレ・バンド「イエス」が2010年に行なったライブ映像、キーボードを弾いていたのが金髪ロング・ヘアーの若者で、それがこのバンドの黄金期のメンバー、リック・ウエイクマンの息子(オリヴァーという名だそうです)だったことにひどく驚愕し、「そんな若いわけはない」とわかっていても「えっ!? リック・ウエイクマンじゃないの?」と思ってしまうほどの容貌は親子だけに瓜二つ、なんだか妙な気分になったもの。そんなこともあって思わず「遺伝子」などということに考えが及んだわけなのですね。
思い返してみると、故・ジョン・ボーナムの息子、ジェイソン君があの方々(Ex.ツェッペリンですね)と一緒にドラムを演奏したこともあった、フリオ@「黒い瞳のナタリー」さんの息子、フリオ・イグレシアスJr.は父と同じ道をまっしぐら、近年はアルバート・ハモンド@「カリフォルニアの青い空」の息子、同名Jr.もミュージシャンの道(音楽はぜんぜん違うけど)を歩む、などなど親=子が同じ道を進む例は挙げたらきりがない。
そればかりではありません。血縁はないものの、憧れのミュージシャンに近づこうと修行する人々だっている。たとえばあのクイーンがカナダ・ツアーを行なうに際してボーカルのオーディションを行なったところ、「フレディの生まれ変わりか」という人が出てきてめでたくフロント・ステージに立った、という話も聞きました。
やや方向性の異なるデレクさんやアルバートJr.などはともかく、みんな「その椅子」に座りたいと思う人はいるんですね。それなら。
いっそのことこういうことをしてみてはどうか。

「襲名」

どうです。いいと思いませんか。たとえば、

二代目ジミー・ペイジ

みたいな。いや、あの方に息子さんがいるかどうかも知りません。でも実際「完コピ」でなりきっている人はたくさんいるはずです。もちろんこの手の音楽に「伝統」なんてものを持ち込むのはおかしいと言われるのは重々承知の上、歌舞伎界や落語界のことを思ってのシャレではあります。が、さらに妄想はすすみ

「二代目ジミー・ペイジが奏でる一子相伝のテルミン!」

とか、

「二代目デュエイン・オールマンのボトルネックを聴け!」

とか(いや実際息子さんのデヴォン・オールマンさんはスライド弾いてるんです)、そんなことが起きたりするんではないか。

「ビルが『二代目クラプトン襲名』狙ってるらしいけどまだまだ、腕はジョーイの方が上だね」(名前は「仮」)

なんてね。絶対ないんですけどね。まぁ呑みながらの話題としては面白かった。あんがい「名前を継ぎたい」とか思う人もでてきたりして、などと妻と笑ったライブ後の居酒屋で焼き鳥と塩味の親子丼(これが絶品)を前についつい焼酎のグラス(ロックでした)を空けてしまった、というのは酔いどれた言い訳。今年「六代目勘九郎」を襲名した「勘太郎丈」へのささやかなお祝いでもあります。


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こんな話の肴にはこの季節おいしい寒ブリを使って「フライパンひとつでできる簡単照り焼き」でお茶を濁してまた次回。酒呑みは苦手な後かたづけ。ロースターや魚焼き網が汚れなくていいですよ。はい。
……しかし「圓生」はけっきょく誰が継ぐんだろうなぁ(ぼそ)。

【Panjaめも】
イエス来日公演
来るんですね。テデスキ・トラックスの時にチラシをもらいました。行きませんけど(笑)。ちなみにキーボードはR・ウエイクマン氏のJr.ではないそうです

「ロバート・プラント抜きでL.ツェッペリンを結成しそうになった」ジェイソン君

フレディの「椅子」をオーディションで見事勝ち取ったとかいう人
マジそっくり

Susan Tedeschi ‘"Live from Austin TX"
ソロ活動時にリリースされたスーザン・テデスキさんのライブ盤CD。リイシューですが今ならDVDがついてたいへんお得。買わなきゃ

●そういえば(^^;)昨年末に開催したグループ展参加に際して製作した「空耳英語ハガキ」を販売する「Panjaショップ」を開店
今なら12枚セットにDVDが付いてコチラもたいへんお得(笑)。なにとぞよろしゅう