ON AIR――ハイソエリアに優雅な靴の音が響く |

当コーナーでは当然のこと、桜丘の全域を回っているわけだが、一言で桜丘町内と言っても様々な“顔”がある。
たとえばメインの一帯である桜通り周辺は多くの飲食店や販売店が並び、賑やかな桜丘を作り出している。線路沿いはいわゆる“裏渋谷”なオシャレさがあり、インフォスタワーの裏には隠れ家的な立地を行かした穴場が点在している。
今回訪ねてみたのは、桜丘のいちばん奥にあたる場所。目の前がもう南平台町となる通りだが、高級住宅街である南平台や、代官山から抜けてくるエリアでもあることから、そこはかとなくオシャレな住宅街の雰囲気がある。そんな一角にあるビルの半地下部分に目をやると、女性ものと思しき靴や小物類などが並んでいる。若者向けというよりは、なんだろう、やはりこの落ち着いた桜丘、さらにハイソなこのエリアの淑女が身に着けていそうな……。

ごめんくださいませ。
「はい、ようこそお出でくださいました。私どもはこれらの製品、『ON AIR TIMES』という自社ブランドの靴やバッグ、小物などを全国のセレクトショップなどに卸販売しながら、お越しいただいたお客さまには直接販売もいたしております『ON AIR』という会社です」
突然の珍客（男だし）にも笑顔で応対してくれたのは大川愛子さん。大川さんは25年ほど前に『ON AIR』を立ち上げ、それからアパレルの会社が多い神宮前や千駄ヶ谷にて事務所を構えていたが、2年前にここ桜丘へ。
「娘夫婦がこのビルの上階を借りて会社をやっていまして、その縁でこちらに決めました。移ってくる前からもちろん知っていましたが、静かでとてもいいところですよね」

直接訪ねてくるお客さんは、移転前の神宮前や千駄ヶ谷時代のみなさんだけでなく、全国各地から参集されるとか。
「卸しの会社ですから、看板を出したりして大々的に告知をしているわけではないですし、『なんのお店だろ？』って思われる方も多いと思うのですね。ただここ最近は、年に2回ここでコレクションを行ないますので、その様子を近所の方がご覧になり『ああ、靴やバッグを扱っている……』とお出でになっていただけることも多くなってきましたね」