「太ったシェフの料理はおいしそう」
「大きな格闘家は強そう」
突拍子もない出だしで恐縮だが、きっと間違いのない例である。痩身の一流シェフだってもちろんいるが(酒が飲めないソムリエだっている)、やはり恰幅のいいほうがどこか説得力がある。そしてプロレスラーなどは人より大きいことがすでに実力だ。
ある日、桜丘の裏道を彷徨っていると、そんなお店を見つけた。“裏渋谷”こと線路沿いの一帯は、裏道に一本入るとどこに抜けるか見当も付かなくなるエリアで、改めていろいろな発見がある。テレビでもおなじみの超有名キャラクターを扱う会社の本社を見つけて驚いたりしつつ、なんとなく角を曲がったところにあったのが『RHYTHM(リズム)』。おお、この店員さんなら……と思わず扉を開けてしまった。
こんにちは。
「いらっしゃいませ、『RHYTHM』へようこそ。店長の間仁田です。今日はカットですか?」
そう、こちらは美容院。写真でご覧のとおりのオシャレな雰囲気とともに迎えてくれたのは店長の間仁田和久さん。ほら、間仁田さんにカットしてセットしてもらったら……説得力あるでしょ。
美容師歴18年という間仁田さんが、この『RHYTHM』をオープンしたのは7年前のこと。「元々は渋谷の公園通りの近くで仕事をしていたのですが、ある日引っ越すことになって、周辺からだんだん探していたのですね。家賃などの兼ね合いから、宇田川町で裏道に一本入った辺りと、桜丘が候補になったのですが、そのときは最終的に宇田川町になりました。そこも周りの雰囲気がよく気に入っていたのですが、ビルの開発でまた引っ越すことになり、そこで薦めていただいたのがこの場所なんです。結局、桜丘に縁があったわけですね」先ごろ久しぶりに宇田川町を訪ねてみたら、やや気に入っていた雰囲気がなくなっていたそうで、これもまた縁のひとつだろう。
間仁田さんとスタッフの大澤さん
では、その間仁田さんの言う“雰囲気”とは……。
「この場所に来てみて思ったのですが、デザインの会社やちょっとしたアパレルの会社なんかが結構ありますよね。そういったデザインやファッションに関する人たちが持っている雰囲気ですよね。以前のお店の周りは、そういった職種のお店が減っていたんですね。それと、やっぱりこの立地です。大手の美容院さんは違うと思いますが、人通りのいいところ……たとえばセンター街で美容院に入ろうと思ったお客さんは、おそらく美容院だけでなく他の用事もありますよね。でもこういった場所だと『RHYTHM』にいらっしゃることが目的であって、だからこそ家に帰ってきたようなお店でありたいと思っています」そんなアットホームなお店は、移転前の宇田川町からのお客さんだけでなく、桜丘やその周辺で活動するみなさんでも賑わっている。
「確かに奥まった場所ですが、代官山に抜けていく道でもあるので、けっこう人通りがあるのですよね。それで知ってくれたお客さんもおりますし、外を見ていても発見がありますね」
「桜丘は勤めている人と住んでいる人、それと学生さんなどが混ざり合って活動している、大都会なのに人との繋がりが感じられます。私たちのような路面店が多くあるのもそうですよね。再開発などもされるようですが、そこは変わってほしくないですね」
「この美容師さんならカッコよくしてくれる」、そんな雰囲気を持つ美容師さんは、この街の空気、いや、まさに雰囲気を愛する人だった。
“裏渋谷”のさらに裏、ここにそんな美容師さんが移転してきた縁、そして出会った縁に、感謝――。
Q・あなたにとって桜丘とは?
「住んでいる人、勤めている人、学生さんと、大都会なのに人との繋がりを感じられる街です」
さあ、カットしていただきましょう。
壁の鳥たちからも温かな空気が感じられますね
こちらは美容院やエステサロンにのみで買うことができるアジュバンのシャンプー類。髪にも身体にも一本で使えるものなどもあります。「界面活性剤などが未使用なので、髪や肌にいいんですよ」
【今回の桜な人々】
RHYTHM
間仁田 和久さん
〒150-0031
東京都渋谷区桜丘町5-11-101(マップ)
ホームページ
http://www.rhythm-hair.com