祝・三冠馬誕生――競馬の三冠と英国の関係

去る23日、JRA(日本中央競馬会)京都競馬場で行なわれた第72回菊花賞でオルフェーヴル号が優勝。オルフェーヴルは春の二冠も制していたことから、有史からの中央競馬史上7頭目の三冠馬の栄誉に輝いた。

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毎年菊花賞が行なわれる京都競馬場
快挙を祝して、今回はこの「三冠馬」のおはなし。なお、今回の「三冠」は3歳牡馬についてものである。

中央競馬における「三冠」というのは、“クラシックレース”とも称される3歳馬限定のレース、皐月賞(芝2000m。4月に実施)、東京優駿(日本ダービー、芝2400m。5月に実施)、菊花賞(芝3000m。10月に実施)のことで、すべてを制した競走馬が「三冠馬」とされる。たとえば今週末に行なわれる天皇賞など3歳以上ならば馬齢制限のないレースでは、現役であれば出走するチャンスは毎回あるのだが、クラシックレースは一生のうちに1回しかチャンスがない。しかもご覧の通り距離も異なり、また春の二冠と菊花賞は5カ月も間が空くことから、馬自体の能力はもちろんのこと、関係者による調整能力から運までが揃ったときに達成される偉業なのである。

達成した7頭は以下の通り。
・セントライト(41年)
・シンザン(64年)
・ミスターシービー(83年)
・シンボリルドルフ(84年)
・ナリタブライアン(94年)
・ディープインパクト(05年)
そして、
・オルフェーヴル(11年)

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最後の英国三冠馬、父としても偉大だったニジンスキー
さて、この三冠というシステムは、日本競馬が範を取った近代競馬発祥の地、英国のものと同様である。英国の2000ギニーステークス(芝約1600m。5月1週に実施)、ダービーステークス(芝約2400m。6月1週に実施)、セントレジャーステークス(芝約3000m。9月2週に実施)をすべて制した馬が「三冠馬」とされていたのに倣ったもので、最後に2000ギニーステークスが創設された1809年から現在までの202年間(!)で、達成した馬は15頭。ただ、国際的に3000m級の長距離レースは衰退しつつあり、英国で春の二冠を制するような実力馬は、セントレジャーステークスではなく来秋オルフェーヴルが遠征することを明言しているフランスの凱旋門賞(芝2400m)に出走することが多い。それ故もあってか、種牡馬として直系が日本にも多数導入された名馬・ニジンスキー(70年)を最後に、英国での三冠馬は誕生していない。

※競馬における距離表記は日本、フランスなどがメートルなのに対し、英国や米国はハロン(約200m)やマイル(約1600m)を使用している。記述中の英国三冠の距離が「約2400m」などとなっているのはそのためである。