スカイライン ―征服―

20110606picm.jpg2012 』、『アバター 』の VFX チームが、低予算のなかで高い技術を駆使し、ハリウッドの指示を受けることなく自分たちの納得のいくやり方を貫いて作り上げた本作。映像の凄さは圧巻である。

親友の誕生パーティで彼の超高層マンションに泊まりにきたカップルは、翌朝、部屋のブラインドから差し込む青白い光を目にする。窓の外には、これまで見たことのない巨大飛行物体が何機も迫っていた。逃げればいいのか? それともここにとどまって息をひそめていれば奴らをやり過ごせるのか? 逃走方法で決裂する彼らに、容赦なく襲いかかるものとは……。

20110606pic1.jpg 震災後、福島の原発は予断を許さない状況が続いているのは、残念ながら周知の事実だ。ところで、その爆発を見物するかのように、ご丁寧にもカメラに映りこんで華麗な飛行を披露していたUFOをご存じだろうか? 津波映像や、余震後にカメラを構えている人々の前にも彼らは現れ、その姿を現す。YouTubeで「Fukushima」「UFO」などと検索いただければ多数の映像がヒットしてくるから、興味のある方はどうぞご覧あれ。私なんぞは生まれてこの方一度もUFOを見たことはないが、こうしたものはお金を払っても見られるわけではないので、死ぬ前までにぜひ一度拝見したいと思っている。だから今度、何も用事がなくともカメラを中空に向けていようかと思う。そうすれば、難なくUFO映像を撮れるのではないかと妄想する昨今なのだ。
はたして彼らは何故、わざわざカメラに映るように飛行しているのか? 全世界に放映されるであろう現場を選んでいるその心理は、自分たちの姿を地球人に知らしめたいと彼らが思っているからなのではないか。

だが、本作の来襲者はそうした前兆をまったく見せることなく、いきなり人類に攻撃をしかける。錚々たるスタッフらが作り上げているだけあって、そのCGと宇宙人のキャラクターデザインは圧巻だ。予算が少ないため、前半で繰り広げられる舞台となる超豪華高層マンションは、グレッグ監督のマンションの19階の一室を使用。その半密室劇で個々人の感情の背景や推移が細密に描かれ、ストーリーもきちんと練られていたなら、この壮大で美しい映像がもっともっと生きたろうにと思うと残念で仕方がない。ラストのトンデモな展開には唖然としたが、あのアイデアがあるなら前半の人間たちだけのシーンを縮め、顛末を最後まで描いたほうがここまでの消化不良感はなかっただろう。または、観客に続編を期待させるために敢えてこの着地点にしたのかもしれないが。
ただ、B級映画としては逸品である。乗り物かのように見えるそれは無機質ではなく、実は宇宙人という有機質。そのフォルムの美しさと気味悪さは、大スクリーンの劇場で味わってこその醍醐味だろう。


監督:グレッグ・ストラウス&コリン・ストラウス
脚本:リアム・オドネル、ジョシュア・コルデス
出演:エリック・バルフォー/スコッティ・トンプソン/ブリタニー・ダニエル/クリスタル・リード/ニール・ホプキンス/デヴィッド・ザヤス/ドナルド・フェイソン
配給:松竹
公開:6月18日(土)新宿バルト9、TOHOシネマズ六本木ヒルズ他全国ロードショー
公式HP:http://skyline-movie.jp/

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