のんちゃんのり弁

「31歳子持ち女子がお弁当作りで再スタート」。そう、三十路を過ぎて子供がいても、“女子”なのだ。

下町育ちの31歳、永井小巻(小西真奈美)。強気な性格の彼女はある日、働きもせずに毎日ぐうたら寝てばかりのダメ亭主に離婚届を突きつけ、ひとり娘ののんちゃんを連れて実家に戻る。自立する女性なるものを目指して就職活動に躍起になる小巻だったが、その年齢なら当然持っているべきスキルも経験もなく、しかも「子持ちだから」という理由でパート並みの就業時間しか望まないというなんとも世間知らずな彼女に、当然ながら企業は首を縦に振らない。なけなしの貯金も底をついてきたそんな折、のんちゃんに毎日作っていた「のり弁」が大評判になり、弁当屋を開くことを決意するが…。

「のり弁」というとどうしても、安上がりだけど栄養に乏しい弁当、というイメージがある。弁当のふたを開けても、真っ先に目に入るのは一面に黒い海苔で、色とりどりの野菜や肉などが入った弁当と比べるとやはり見劣りがするように思える(いや、そんな素朴なのり弁だって私は充分に好きなのだが)。だが、小巻が作るのり弁は違う。見た目は確かに一面黒だが、ひとたび箸を入れれば、そこには様々な具材を混ぜ込んだ何層もの混ぜご飯、色鮮やかなほうれん草や玉子焼きが顔を出し、見事に美しい断面が出現するのだ。

普段何気なく作っていたその弁当だが、料理が好きでなければそこまで凝ることはできない。ある出来事からその自分の特性に気づいた小巻は、居場所ではなく「行き場所」を見つけ、その「場所」を目指して奮闘する。だが、そこはそれ、どう転んでも世間知らずである。小料理屋の主人(岸部一徳)からグサグサと心に突き刺さる言葉を何度も言われ…そして“女子”は“大人”になっていく。おかずのないのり弁ではなく、栄養たっぷりののり弁へと、小巻の人生もステップアップしていくのだ。それを演じる小西の演技がこれまたド迫力で、私などは何度もドキリとし、何度も腹を抱えて笑ったことをここに告白しておこう。

最近では「弁当男子」なる人種が急増中だという。折からの不況による節約、健康ブーム、外食しない(コンビニ弁当の容器ゴミを出さない、飲食店からの残飯ゴミを出さない)ことによるエコ推進も理由とのことで、男性でも自身の手作り弁当を持参するのだとか。何を隠そう、実は私は弁当は作らない派なのだ…だって、料理は作りたてが命! というのは建前で、おかずは汁気がないようにしなければいけないし、あの小さな容器のなかに入るように具材の大きさも揃えなきゃならない…んー、面倒い(笑)。あ、でも、待てよ、そっか、小巻ののり弁なら、おかずもご飯も平らに敷き詰めるだけだ。私も“女子”を卒業して、“大人”になるためにのり弁でも作ってみようかしら。(絶対やらない、に10000ルピー!)

のんちゃんのり弁(DVD)
新装版 のんちゃんのり弁(コミック)
原作:入江喜和『新装版 のんちゃんのり弁』
監督:緒方明
脚本:鈴木卓爾/緒方明
出演:小西真奈美/岡田義徳/村上淳/佐々木りお/山口紗弥加/岸部一徳/倍賞美津子
配給:キノ フィルムズ
ジャンル:邦画
公式サイト:http://www.noriben.com/

© 2009「のんちゃんのり弁」製作委員会