事実婚 新しい愛の形

「事実婚」という言葉には、一昔前なら、内縁関係や日陰の身といった暗いイメージがつきまとっていた気がする。そしてここ数年、芸能界を中心に「フランス婚」なる言葉が登場するに至って、派手で華やか、すすんでいるカップルといったイメージが加わった。
しかし、本書を読むと、そこには、ごく一般的な、いわゆる法律婚をしている夫婦となんら変わらない夫婦も登場する。たまたま女性のきょうだいしかいなくて、自分の名字を残したい。しかし夫婦別姓が認められていない現在、結果として事実婚となったというわけだ。なかには、相手に戸籍上の配偶者がいて、というケースもある。しかし、昔のように泥沼状態になることなく、離婚成立後も、今のままでなんら不都合がないからと、そのまま事実婚で15年以上一緒にいるというケースに至っては、まさに著書の言う理想の形であると思われる。
こういった内容の著書には、「事実婚こそ唯一の理想」的内容のこともままあるが、そうではなく、著者が最後に語っているのは「結婚の形態を選ぶ自由」が必要だということ。その意味では、「普通」を生きる人たちにも、ぜひ読んでほしい一册。

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撮影/秋元孝夫
僕がこの本でいちばん言いたいのは
男女の愛は移ろうものだっていうことなんだよね。
日本の結婚というのは理想主義で、
夫婦は愛し合っているという建前になってる。
でも、世の中に破綻している夫婦はたくさんいる。
それなのに既存の結婚制度に縛られて、
嫌いになったのに夫婦のままでいたりする。
これはお互いに不幸なことですね。
本当に愛する人と一緒にいることこそ理想でしょ。
事実婚というのは、
本当の意味で心と心が結ばれている実質婚なんですよ。
(渡辺淳一)

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作者名:渡辺 淳一
ジャンル:人文科学
出版:集英社

事実婚 新しい愛の形