【SUJI TAPさんに7つの質問】
Q1:ダンスを始めたきっかけは?
高校に入学した当時、ちょうどダンスがブームになっていたんです。ビートたけしさんの番組内で、「ダンス甲子園」というコーナーが人気を集めたり、ZOOというダンスグループが活躍していたり・・・。そうしたダンスをテレビで見ていて、「おもしろそうだな」と。熊本の田舎町に住んでいたのですが、街のスタジオまで、週に2回、1時間近くかけて通い、ストリートダンスを習うようになりました。
Q2:ソロのタップダンサーになるまでの経緯は?
高校卒業後、上京して放送関係の専門学校に通うかたわら、ダンスも続けていました。そのうち、いろんなダンスグループに所属して、アーティストのバックダンサーをやったり、イベントで踊ったりするうちに、自然とダンサーとしての道を歩んでいくようになったんです。ヒップホップ、ハウスダンス…いろんな踊りをやりましたね。
ところが、21歳くらいから、今後どうしたらいいのか、悩むようになりました。フリースタイルのダンスだったので、これでプロとして食べていけるのか、行き詰まりを感じ始めたんです。そんなときに思い出したのが、16歳の頃に観た映画「コットンクラブ」での、グレゴリー・ハインズのタップシーンでした。「黒人の踊るリズムタップって何て格好いいんだろう」と思って、当時、そのシーンばかりくり返して見ていたんです。
「自分は前からこれがやりたかったんだ」と気づき、さっそくあこがれのタップダンサーのHIDEBOHさんのところに習いに行きました。これまでのダンスは、音楽を聞いて体を動かせばよかったのですが、タップダンスは足で音を出すという演奏者としての要素も強いので、最初はずごく難しかったですね。頭をフル回転させないとできないものでした。
それから5年間くらいは、HIDEBOHさんの主催するタップダンスグループに所属して、ステージで踊ったり、北野武さんの映画に出演したり、タップ三昧の日々でした。
ソロ活動に踏み切ったのは、30歳を前にした、29歳のときです。グループに入っていれば、そのグループの色の中で自分の役割を果たせばいいだけですが、「一人だったらどうなるだろう」と思ったのがきっかけです。
Q3:海外修行に行ったそうですが、そこで得たものは?
まず、ずっとあこがれていたニューヨークに3ヵ月ほど行ってきました。地下鉄の構内に板を持っていき、お金を入れる缶を置いて、タップのパフォーマンスを毎日やっていたんです。そのうち、現地に住んでいる日本人が集まってきて一緒に踊るようになり、1〜2時間で3万円くらいの収入になったりして、みんなで食事に行ったりしました。それはそれで楽しかったけれど、その一方で、やっぱり地下鉄構内なんかじゃなくて、ステージでライトを浴びて踊りたいという願望がふくれ上がっていきましたね(笑)。
それから、2007年は、ブラジルのサルヴァドールという街に、1ヵ月行きました。「自分の知らないリズムって何かな」と考えたときに、「サンバのリズムだ」と思ったからです。現地では、仲間3人で部屋をシェアして、朝起きてから日が落ちるまで、ずっとタップ踊っていましたけど(笑)。
この旅でおもしろかったのは、「カポエラ」というブラジルのダンス格闘技を毎週目の当たりにできたことです。これを踊るために日本からはるばるやってきている人も多くて、「継続して何かを続けるって大事なことなんだな」と感動しました。
海外修行といっても、得たものはテクニック的なことではなく、別のものでした。ステージで踊りたいという反骨精神だったり、継続の大切さだったり…
とにかく一つは何か得るものがありますね(笑)。
Q4:毎日どんなふうにどれくらい練習しているの?
平均して4時間、多いときは6〜7時間練習する日もあります。基本的には、タップ専用のスタジオで鏡を見ながら練習しますが、若者たちがやっているように、わざとストリートでもやることにしているんですよ。ビルの窓に姿を映して踊っていると、なぜかすごく格好よく見えるし、車のクラクションの音や、ビルの電気が少し落ちている街路などが、ダンスのイメージを湧かせてくれるんです。
とにかく毎日、練習するようにしています。昨日できていたことが、今日できなかったらどうしようという思いがあって、自分を確認せずにはいられないんです。臆病なのかもしれませんね(笑)。
Q5:作品を作るときに考えることは?
タップというものは、自分の中ではタップという枠に納まっていないので、とにかくいろんな可能性を探すようにしています。ヒップホップやほかのダンスとのコラボレーションはもちろんですが、一昨年に品川のチャペルでライブをやったときには、和太鼓、女性ヴォーカル、トランペットなど、いろんなジャンルのアーティストをゲストに迎えてやりました。また、あるライブでは、絵描きやバスケットのフリースタイルのグループと一緒にやったこともあります。おもしろいなという企画は、今後もどんどん実行していくつもりです。
自分のタップダンスに関しては、いろんな音を出していきたいですね。タップ靴で板を叩くと、普通はカツカツという高音が耳に響いてきますが、板の裏にマイクを仕掛けることで低音も拾うことを試みています。また、わざとタップ靴の金具をゆるめて、カシャカシャという音にしたり、ブーツで踊ったりもしています。
Q6:毎週木曜日に開催しているタップイベント「足音」に対する思いは?
タップというものは、自分の中ではタップという枠に納まっていないので、とにかくいろんな可能性を探すようにしています。ヒップホップやほかのダンスとのコラボレーションはもちろんですが、一昨年に品川のチャペルでライブをやったときには、和太鼓、女性ヴォーカル、トランペットなど、いろんなジャンルのアーティストをゲストに迎えてやりました。また、あるライブでは、絵描きやバスケットのフリースタイルのグループと一緒にやったこともあります。おもしろいなという企画は、今後もどんどん実行していくつもりです。
自分のタップダンスに関しては、いろんな音を出していきたいですね。タップ靴で板を叩くと、普通はカツカツという高音が耳に響いてきますが、板の裏にマイクを仕掛けることで低音も拾うことを試みています。また、わざとタップ靴の金具をゆるめて、カシャカシャという音にしたり、ブーツで踊ったりもしています。
毎週木曜日に開催しているタップイベント「足音」に対する思いは?
ちょうどブラジルで「継続が大切」ということを学んで帰国したときに、グッドタイミングでダンス仲間から「多目的スペースを作った」という連絡が入ったんです。「これだ」と思って、毎週開催するようになり、今日に至っています。
日本では、どこを探しても、週1回タップイベントが行われているような場所がなかったので、ある意味「挑戦」のつもりで、試行錯誤しながら開催しています。
幸い、タップを見たい人、踊りたい人がたくさん集まってくれて、毎回熱いイベントになっています。「ここに来ればタップダンスが見ることができますよ」と公に言えることは、自分にとっての強みにもなっていますね。
Q7:将来の展望は?
日本人の多くは、タップダンスという言葉は聞いたことがあっても、どんなものかを知らない人が圧倒的に多いと思います。そこで、リズムタップの魅力をもっと伝えていくうえで、ダンス仲間とともに、自分たちがもっとメディアに出ていけるような計画をしないといけないと思っています。そのためには、今年からはマネージメント面もしっかりやっていくつもりです。また、将来は、何も媚びることのない自分たちのスタイルで、国内外でツアーができたらいいなと思っています。
取材を終えて—
インタビューに先だって、12月9日に行われたSUJIさんのライブ「Simply Full Of Tap」を観に行ってきましたが、とにかく圧巻のステージでした。ミュージカル中のタップダンスは映画などで見たことはありましたが、黒人から発祥したリズムタップを目の当たりにしたのは初めて…そのリズムや踊りの格好よさに惚れ惚れしてしまったのです。インタビューの中で、リズム感の素晴らしさを話題に上げると、SUJIさんいわく「リズム感は運動神経、そして気合い」と語っていたのが印象的でした。リズムタップをまだ見ぬ多くの人たちに、ぜひその踊りを見せて、虜にしてもらいたいです。
【プロフィール】
SUJI TAP(32歳)
本名:浦上 雄次
15歳の頃、熊本のダンススタジオでストリートダンスを始める。19歳で上京。ダンスチーム・ヒップホップシーンで注目を浴び、数々の有名アーティストのバックダンサーをつとめ、22歳でタップの巨匠HIDEBOH氏に師事。以後、タップダンサーに転身し、2001〜2005年「THE STRiPES」のメンバーとして活躍。その間には、北野武監督の映画「座頭市」(2003年)、「TAKESHIS」(2005年)に出演。2006年からはソロ活動をスタート。
様々なライブやイベント活動のほか、ワークショップや映画の振付けなど、活動は多岐にわたる。2007年8月より、毎週木曜日のタップナイト「足音」を代々木ANCEにて開催中。