厳冬のウィーン。その寒さを吹き飛ばすかのように毎年オーストリア人はワルツで踊り明かす。そう、大晦日の「皇室舞踏会」を皮切りに舞踏会の季節が始まったのだ。そんな豪華絢爛な舞踏会は年末から3月まで続き、紳士淑女は熱気さめやらぬ日々を過ごしている。
いちばん大きな舞踏会は、毎年2月中旬に国立歌劇場(世界三大オペラ座のひとつ)で開催される「オーパンバル」で、大統領の主催による大規模な舞踏会で世界中の注目を浴びる。政財界の大物をはじめ、芸術家に俳優たちと有名どころが一挙に集まる一夜。普段はオペラ座の客席なのだが、椅子をはずしてダンスのために板の間にしてしまうため、すっかり変身してしまう。
デビューしたばかりの淑女たち ©Wienerstaatsoper17歳から24歳までの「デビュタント(一般に初めて社交界にデビューする者を指す)」が毎年オペラ座でデビューする。若い紳士は黒のタキシード姿が凛々しい。淑女たちは毎年違うデザインのティアラと純白のドレスに身を包まれて登場する。誰でもが参加出来るわけではなく、テストがあるので何年も前からテストに強いと言われるダンス教室で猛練習をして、晴れて社交界へのデビューが出来るのだ。皆が夢みるオペラ座のデビュタント。一介の右まわりワルツとは違い、左まわりが特徴なので特別厳しいテストに受かった者だけがデビューできる。
感じますね、華やかな雰囲気を ©Wienerstaatsoper舞踏会は、夜10時から翌朝5時まで続くから、よほど強靭でないとへたばってしまう。高校生はそのまま早朝に学校へ舞踏会の衣装で授業を受けに行くという場面も見た事がある。彼らは前日の生中継でTVに出たので学校中でもヒーローになってしまうようだ。
舞踏会とはいえ、一晩中ワルツだけを踊っているわけではなく、オペラ座内にその日のために特別に用意されたカジノ、そしてディスコもあるので、気分転換にいろいろな施設を利用出来る。ふだんは赤字続きのオペラ座だが、この一晩で一気に黒字になるという特別な日。趣向を変えてワルツの街、機会があればウィーンで舞踏会参加はいかがだろうか? 参加だけなら事前に申し込めば誰でも入る事が可能だ。
オペラ座のバレダンサーたち ©Wienerstaatsoper