【駅員はつらいよ】八王子? 小田急?? それって○○???

暦の上では「残暑お見舞い申し上げます」。地上駅でも地下駅でも、キンキンに冷えているホームというのはあまりないものでして、勢い電車に乗り込んだときの涼しさに嬉しかったり驚いたり、そんなお盆休み週ではないでしょうか。

そう、お盆休み。やはり目に見えて駅や車内に人が少なくなるもので、通勤の利用駅である桜木町や横浜、渋谷なども、観光駅ながら駅自体にいつもの混雑は感じられない。あ、日中に通りかかる渋谷での『ポケモンスタンプラリー』コーナーは大盛況ですが。以前も書きましたが、学生とサラリーマンの街、田町駅はヒマでヒマでしょうがないだろうなあ。

駅員のおはなし。
毎度毎度書いていることだが、内勤をしたりホームに降りたりすることがない「きっぷ売り場の前をウロウロすること」が仕事の駅員には、様々な質問事が投げかけられる。○○駅への行き方や料金の案内、駅周辺の地理……これらが一般的だが、中には「次にホームから見られる新幹線は"N700系"ですか?」なんてのもあったり、「近所でいちばんオススメのラーメン屋はどこですか?」なんてこともあった(教えてよかったのか知らないけれども、「個人的には……」なんて言ったりしましたな)。そうそう、当時は今ほどブームではなかったはずだが、慶應大学の近所に『ラーメン二郎』の本店があり、場所を聞かれたことが何度かあったっけ。

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田町と言えば慶應大学。何百回と場所をお教えしましたよ、ハイ
言ってしまえば「質問に答えること」がメインの仕事なので、いろいろな質問や疑問をそれこそ老若男女、日本語だけでなく外国語まで飛び交わせながらお客さんに理解をしていただくのが大変でもありまた楽しかったのだが、どうにも答えられない質問もあるわけでして……。言語的にはスペイン語での質問に、「東京タワーに行きたい」旨はなんとかわかったが、どうしても伝わらなかったなんてこともあるが、それよりも……たとえば質問の内容が気の毒なほど"間違っている"、とか……。

Q1「すみません、八王子ってどっち方面ですか?」
Q2「あの、小田急線ってどこで乗るんですか??」
これ、いずれも私が田町駅にて受けた質問である。JRでは山手線と京浜東北線の駅であり、都営地下鉄の三田駅も隣接している田町駅。無論のこと小田急線は通っておらず、八王子は新宿のはるか西方、だ。とりあえずQ1の質問には、駅から見えるNEC本社ビルを指差して「言うなればあの建物のはるか向こう、50キロほどですね」、Q2には「山手線で新宿に行って乗り替えですよ」と回答した。

「???」

どちらも同じく頭に「???」がちらついているお客さん(むしろ私も)。いやここに行きたいのですけれどね……とQ1のお客さんは周辺地図を出す。見る私。あ、なるほど。
そしてQ2のお客さんの場合、この駅を走っているって聞いたんですよ……と考えながら出た駅名がこちら。

「ここって町田、ですよねえ」

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田町ではなくこちらは町田、です。
みどりの山手線ではなくみどりの横浜線、です
ご両者とも同じ勘違い。いや、ここ町田じゃなくて田町です……と私もお客さんも呆然。まあQ1さんは、町田に拘らずとも田町近所にもあるネットカフェに行きたかっただけだそうで笑い話で済んだのだが、困ったのはQ2さん。聞けば友人とのパーティで町田から小田急に乗り替えたかったらしいが、約束の時間は20分後……。
どうしたら町田までいちばん早く着きますか、その切実な問いに「新宿まで行って乗り替え」以外で思いついた、「品川から新幹線に乗って、新横浜で横浜線に乗り替え」なんて提案もしておいた(実際に時間だけなら最先着)。
ありがとうございます、そう言うと同時に待ち合わせの友人から電話が掛かってきた。「あ、ホントにゴメン。遅くなるから先に行っておいて。ちょっと勘違いしちゃって……」その会話の内に、「間違えて田町に来た」なんてことは触れられてなかった。わかりますよ、その気持ちは(笑)。

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こちらは小田急線の町田駅。
特急もロマンスカーも停まるターミナル駅です
と、私の記憶にあるこのご両者だが、ある日の午後、なかなかにエキセントリックな抗議の声を上げるおばあちゃんが助役さんと一緒に事務室に入っていった。で、その日の帰りにその助役さんと顔を合わせる。さっきのおばあちゃん、大丈夫でしたか? そんな私の問いに苦笑いで助役さんが答えた。
「いやあ、参ったよ。お金が足りないって人だったんだけれど、町田に行くつもりが田町に来ちゃったなんて言ってるのよ。そんなことあるわけないよねえ、まったく」
いやありますよ、と私が即答して、今度は助役さんが「???」なのであった。