【鉄道ウンチク】ドアは「閉まる」のか「閉める」のか――アナウンスの謎・その1

「ドア閉まります」
「ドア閉めます」
「ドア閉めさせていただきます」

もう18日ではありますが、明けましておめでとうございます。今年も鉄道に関するよもやま話をお送りいたします。高評価いただける“駅員シリーズ”を中心にしつつ、これまでの切り口またそれ以外もドンドンと出していきますので、今年もよろしくお願いいたします。それでいてまあ、初っぱなからウンチク関連ですが(笑)。

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JR関内駅。
「ドア閉まります」
さて今回はまず冒頭の三つ。電車のドアが閉まるときにおなじみのアナウンスを思いつくまま記してみた。これ、特に最初の二つは、車掌さんやホームにいる駅員さんの言い間違いでなければ、実は明確な違いが含まれている。
運転士さんだけのワンマン運転、もしくは“ゆりかもめ”のような完全無人の運行を除いて、運転士と車掌が乗務している場合、電車のドアを閉める(開ける)のは車掌の仕事である。駅に到着してドアを開けた後、ホームには「関内です。大宮行き間もなく発車します」などのアナウンスが流れるが、ではこれを喋っているのは誰か?
この答えは、先にも記しているように車掌か駅員なのだが、その違いは鉄道各社はもちろん、たとえば同じJR東日本でも駅によって異なっている。

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京急金沢文庫駅。
「ドア閉めます」
たとえばJR関内駅を通る根岸線(京浜東北線)の場合、関内駅では駅員がマイクを握っている。ただし、隣の石川町駅や山手駅では、車掌がホーム最後尾にあるマイクでアナウンスや到着メロディを流している。
また、私鉄の京浜急行(京急)の場合、駅に列車が着いて停車から出発までのアナウンスはすべて車掌が行ない、しかも全駅共通のワイヤレスマイクを使用するため、乗務員交代などがない場合はホームに完全に降り立つこともない。ドアから半身でアナウンスをしてドアを閉め、電車が出発する。
この誰がアナウンスしているかの違い、それが「ドア閉まります」と「ドア閉めます」の違いとなる。単純に国語の“動詞活用”なのだが、京急のようにドアを閉める車掌が自らアナウンスをしている場合は「ドア閉めます」、関内駅のようにドアを閉めることはない駅員がアナウンスをしている場合は「ドア閉まります」、なのである。

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西武新宿線西武柳沢駅。
「ドア閉めさせていただきます」
その点で「ドア閉めさせていただきます」は、「閉まる」、「閉める」の謙譲語なので車掌でも駅員でもどちらでも当てはまる。このアナウンスを聞いたのはたしか西武新宿線で、全駅車掌のアナウンスだったと記憶しているのだが、とりあえず「ずいぶん丁寧だな」と思った記憶がある。

ところで、京急のドアが閉まるアナウンスに対して、滑舌が悪いというかなんというか、定番ネタで“ダァシヤリヤス”というものがあるのだが、記したように京急の標準ならば“ダァシメヤス”にならないといけない気がする。これは誤解なのかなんなのか、新年から誠に気になる次第だ。