Here Comes Sumer ‐3‐ グラン・パラディソNO.1

デボナから降りてシャモニーへ戻った翌日、グラン・パラディソ登山に向けて出発した。

シャモニ滞在の前半1週間は雨にたたられたが、後半1週間は幸いにも好天気続き。ヨーロッパ滞在も残りわずか。ラストチャンスだ。シャモニー到着後、最初の山行で、わずか30分で敗退した同じ山へ行くことが心理的に影響がないかと言えば大いにあるわけで、内心、心配でつぶれそうな軟弱なメンタリティーには我ながら驚く。

デボナクライミングではアプローチ、予測タイム5時間を40分ショート、登攀はやや時間がかかったりしたものの、問題なく「針峰」クライミングを堪能したことで、縮こまっていた心が少しはほぐれたが、一転曇りなき晴天とはいかず「ダイジョブかな」の心配はどこまでもついてくる。

「デボナのアプローチ5時間が4時間40分だったんだから、大丈夫です」「ほんの3時間のハイキングコースです」
私の心中を察知して、またまた篠原さんとKさんから「大丈夫」シャワー。自分でも「ダイジョブ、ダイジョブ!」とことさら言い聞かせる。

8月7日
シャモニーから車で2時間でポン1960mの駐車場に着く。

datin140919_01.jpg 敗退した時はここまで行きも帰りも寝ていたから、ほとんど印象がなかったが、どうして風光明媚。それに1900mとあって空気がクリア。
ザックを背負って「さ、頑張ろ!」と気合を入れたら
「頑張んなくていいのよ、楽しんで行きましょ!」
とKさん。
「ですね、リラックス、リラックス」
「自分にプレスかけちゃダメよ」

datin140919_02.jpg 全山域イタリア圏の山となればイタリア最高峰になるグランパ・ラディソ(イタリア語で大いなる天国の意)だけあって、エマニュアル II 小屋2735mまでの山道は、それこそ子供も相当な高齢と見受けられる人らもゆっくりゆっくり自分のペースで楽しみながら登っている。(モンブランはフランスと国境を分け、モンテローザやマッターホルンはスイスと国境を分ける)

戻りの人らと挨拶を交わしたり、超ゆっくりペースのパーティーを抜いたりしながら、雄大なアルプスの山景色の中を歩いているとだんだんに気持ちがほぐれていくのがわかる。3時間弱でグラン・パラディソ登山のベース、エマニュアル II 小屋に着いた。

datin140919_03.jpg 小屋は和気藹々。子供連れのファミリー組や高齢者組は小屋で一泊して山気分を楽しみ、登頂はせずに、またゆっくり下山していくらしい。ご飯も「スープorパスタ?」が言うなれば前菜でチキンとかポークのメインが出て、最後にデザートという具合だから、たっぷり1時間以上はかかる。でも悪くないよね、こーゆーの。

翌朝は早起きしなければならないので、食後しばらくして早々と寝床にもぐりこむが、なかなか寝付けない。
アプローチはダイジョブだった。でも明日が本番。雪斜面の上り下りダイジョブかな?ちゃっちゃと歩けるかな?!
頭の中で悩んだとて何の足しにもならない心配をグルグル回しているうちに、眠りに落ちた。

8月8日
4:00朝食
4:20グラン・パラディソ山頂4061mを目指してスタート。標高差1326m。
ヘッドランプを点けて歩き始める。それほど気温が低くないのがありがたい。

datin140919_04.jpg もう悩んでも何にもならない。精一杯ヨーロッパの雪山を味わって来よう!できるだけ周りの景色を目に焼き付けながら黙々と歩いた。

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