2006年、世界を震撼させた『ダ・ヴィンチ・コード』。その続編、4000万部の大ベストセラー『天使と悪魔』がついに映画化! 宗教象徴学者ロバート・ラングドン教授がまたまた暗号を解きまくる!? 公開を前に主演のトム・ハンクスとロン・ハワード監督、ヒロインのヴィットリア役のアイェレット・ゾラー、プロデューサーのブライアン・グレイザーが来日し、撮影秘話などを語りました。
Q:前作と比べて製作や演技などはいかがでしたか?
ブライアン:あれだけヒットした『ダ・ヴィンチ・コード』を超える作品を作りたかったんだ。それが今回のいちばんのチャレンジだね。そして、原作の小説『天使と悪魔』もより映画に向いていたし、主人公・ラングドンのキャラクターがこのストーリーをどんどん進めていくということで非常にペースが出たと思うよ。それが『ダ・ヴィンチ・コード』とは違うところで、非常に楽しい作品に出来上がっているよ。
監督:『ダ・ヴィンチ・コード』がまず先で、次がこの『天使と悪魔』なわけだけれど、2番目に『天使と悪魔』がくるというこの順序は非常に正しいと思う。前作の『ダ・ヴィンチ・コード』では、もともと学者で本の虫で、学問を学び、歴史に興味があるという、ラングドンという非常に独創的なキャラクターが、突然非常に暴力的なサスペンス・シチュエーションに放り込まれるという設定だった。第2作の今回は、さらに非常に緊迫感のあるアクションに仕上がっているんだ。だからラングドンが拍車をかけていくという意味で、順序は正しかった。学問の知識豊かな学者が、ヒーローとしてさらに成長したんだ。今回は、もっと危険なところに放り込まれてそれに対応していくという、ハイペースで非常に緊張感がある展開だよ。ラングドンという人物が、2作を通じてヒーローとして成長して変化していったんだ。
トム:僕から見たラングドンは根本から変わったというわけじゃなくて、第1作の『ダ・ヴィンチ・コード』でのあれだけの経験をしたからこそ、それを活かして今回の事件にぶつかっていったんだ。そして本作の背景であるヴァチカンで、いわゆるパブリックエネミーNO.2みたいな形になってこの事件に挑んでいくという、そういう風に僕は解釈したよ。そして学者である彼が犯罪と闘い、結局はローマ法王の選挙にまで関わっていくという、ある意味これは非常に論議を醸す冒険をやっちゃうよね。僕はラングドンのことを、シャーロック・ホームズやインディー・ジョーンズのような、普遍的なヒーローの要素を持っていると思えるんだ。今後、このシリーズを5本でも6本でも撮りたいけれど…監督、どう?(笑)
Q:ヒロイン役のアイェレットさん、オスカー監督であるロン・ハワードさんとオスカー俳優のトム・ハンクスさんと共演された体験はいかがでしたか?
アイェレット:とにかく素晴らしかったわ! とても楽しかったの。この経験は墓場まで持っていけるわ。こんな大作に出演することは、夢に見ていたけど、実際に起こるとは思っていなかった。2人のこの偉大な人たちと仕事ができたこと、また、もちろん現場にいたほかの方々皆が特別な方々で、彼らのスタッフからメイクさん、本当に素晴らしい方々と仕事をすることができたの。もう二度とこういう経験はできないかもしれないけど、でも二度目があるように祈っているわ。
Q:トムさん、共演されたアイェレット・ゾラーさんはとても魅力的な女性なんですけれども、ラングドン久寿のように彼女の秘密は解けましたか?
トム:彼女はこの撮影中、僕の宝物だったんだ。ラングドンとヴィットリアの初対面の場面のように、深い関係はなくても、ちょっとした目つきで2人がコミュニケーションを深めていくという、そういう間柄を演じていたからね。2人だけの芝居、カジュアルな演技で2人の関係を表していくという環境を作ったよ。彼女はとってもオープンな人だから、隠れた秘密は持っていなかった。ただ、僕がバカなことをした時に、彼女は「あなた、バカなことをしたわよ」とはっきり言う性格で、ちゃんと教えてくれる人だったよ。
Q:監督に質問です。今回ヴァチカンで一部撮影の許可が下りず、ローマ市内でゲリラ撮影等を行ったとお聞きしたのですが、宗教がテーマということで、撮影に苦労されたのか、それとも『ダ・ヴィンチ・コード』ですでに経験されているのでそれほど苦労はなかったのか教えて下さい。
監督:撮影に関しては、もちろんヴァチカンから協力は得られないことはわかっていたよ。『ダ・ヴィンチ・コード』の時には教会の内外を撮らせてほしいと言ってもかなり問題があって、今回もまったくダメだろうということはわかっていた。でも幸いにもローマという街はあらゆる写真は撮れるし、たくさん資料もあるので、そういうものを駆使して、観客が本当にローマを歩いている、ローマの中で冒険をしているんだと感じてもらえるよう画作りをしたよ。ゲリラ撮影なんだけど、もちろん法律は破っていないけど、かといって許可をもらったわけでもないんだ。いわゆるインディー映画の人たちが街に出てパっと撮るという手法だね。いろんな班がローマ中に散らばって必要な画を撮ってくるというようにしてやってきたよ。映像作りだけど、撮影、美術、特撮班の人、あらゆる人があらゆる技術を駆使して画を組みたてていき、そして100年前のサイレント映画で使われている手法から、現在のCGの手法まで、全部組み込んで作っていったんだ。でも観客の心は本当のローマにいるんだという気持ちを起こさせるように、映画のマジックと思わせないで本当に旅をしているんだ実感させるような映像にしていったよ。いろいろと議論を持ちだす人もいるけど、ダン・ブラウンの小説はそういうものを引き出すことに魅力があるんだ。本を読んだ人、映画を観た人が議論をする、世界のいろいろな状況の中で「あれは本当はどうなんだ?」とディスカッションする、そういうところに魅力があるわけなんだ。もちろん僕はこの
映画がいろいろな人の議論を呼ぶことには決して当惑していないし、それこそがこの映画なんだだと思っているよ。
ブライアン:『ダ・ヴィンチ・コード』でヴァチカンといろいろなことがあって、いろいろなことを経験して、ヴァチカンとしては、「いや〜困った、またアイツらが戻ってきた」という感覚だよね。
Q:ダン・ブラウンさんが第3作を書き上げたと聞いたのですが、映画化の可能性はあるのでしょうか?
ブライアン:トム、出てくれますか?
トム:また東京に戻ってきて、4日間その映画のプロモーションをできる、という条件付きならやるよ!
Q:本作は宗教と科学の対立とか、あるいは人間の普遍性とかいろいろなテーマを内包していると思うのですが、作られた側としてこの映画のテーマ性をどのように捉えていますか?
監督:僕がテーマと思うのは、ラングドンというキャラクターがあらゆることに対してオープンな姿勢を持っているということだね。人間というのは自然や神様がくれた知性というものを用いてあらゆることに疑問を投げかけている。それが人間のあるべき姿だと思っているよ。聖書や宗教を押し付ける主義を丸飲みにしてはいけない。何かおかしいなと思ったら、人間は疑問を呈して考えていくべきだし、それを深く掘り下げていくべきだ。そういう姿勢がいちばん重要だと思う。過去、人類は政治や宗教を暴力や恐怖に変えようとしてきたけど、そういうことをやめるためにも、人間が知性的にも肉体的にもそれらに対抗して先に進み、よく考えて探索していくということがこの映画のテーマだと思うよ。
トム:『ダ・ヴィンチ・コード』の場合は信仰と歴史を描いていたけど、今回は信仰と科学という風にその対極が変わってきたんだ。超現代的な科学と宗教がどう見合っていくのか、その答えが出ない。この世の中には宗教も科学も必要で、その両方ともが共存するスペースがあると思う。だからソニーが多額なお金と才能と努力を費やして作り上げた映画を皆さんが劇場で観ていただけたなら、ただ観たというだけではなく、何か考え、皆で話し合うというものが残ったとしたらとっても嬉しいよ。
アイェレット:映画のいちばんのテーマとして興味を持ったのは、信仰と宗教、そして科学ね。科学も宗教も世の中に責任を持って臨まなければいけないこと。ヴィットリアという役は科学者だから、映画撮影中も私もいろいろなことを自問たわ。私がやっている科学の結果はどうなるんだろう、どういう影響があるんだろうというようなことをね。この映画の素晴らしいところは、単なるハリウッドの大作というよりも、観終わった後にディスカッションしたり、いろんな疑問などが生まれてくることね。私たちも撮影中に話し合ったし、観客側に知性があると設定して、観客をリスペクトしている映画とも言えるわ。
Q:物議を醸すような作品に関わるというのはどういうお気持ちですか?
ブライアン:『ダ・ヴィンチ・コード』の話題が初めにスタートした時には非常に不安要素が高かった。宗教についても極端な意見がありますし、また歴史についてももう確定でゆるぎないと言い切っているような部分もあるからね。でもプロデューサーの僕よりトムや監督の方が物議の的になるから、僕としては楽だったよ。
アイェレット:物議の面よりも、とにかくトムとロンと仕事ができるという喜びに浸っていたわ。
トム:論議が、中心であるストーリーを隠してしまうほど大きくなってしまう可能性もあるけれど、でもこの映画はそうではなく、そういった問題を提議して考えさせるという役割なんだ。原作と映画は少し違った言い方をしている。たとえば、『ダ・ヴィンチ・コード』では原作は「2000年前にこういうことが起こった」と断言しているけど、映画では「2000年前にこういうことが起こった、と言っている人がいる」という解釈になっている。『天使と悪魔』に関しては、昔話の論議ではなく、法王の地位をジャックするというところまで話がきているけど、そういうことが本当にあり得るだろうかという疑問をいだかせるところが、本作の特筆すべきところだと思うよ。
監督:僕は個人的に論議を自ら求めたり、挑戦、対決をする人間ではないんだ。でも『ダ・ヴィンチ・コード』や『天使と悪魔』でいわゆる賛成派、否定派の間に入ってその両方を考えながら映画を作っていったというのは、僕の人生経験にも非常にプラスになったよ。『ダ・ヴィンチ・コード』を作った時に僕が非常に尊敬する方から「これは物議を醸すからやめろ」というアドバイスをもらったんだ。でも僕は、世の中の人すべてを喜ばせることは不可能で、必ず反対の人と賛成の人がいる。確かにある時には一部の人を怒らせるかもしれない。でもそれを敢えてやるのがストーリーテラー、監督であると判断した。そういうことを認識しつつ映画を撮ったのは初めてだったよ。自分の信じることをポジティブに映画の中で表現し、しかも娯楽的な映画を作っていく、これが僕の今後のポリシーになっていくと思うんだ。
会見場では、トムがマスコミ陣をバックに記念撮影する一幕も。話題の大作となること必至の本作、見逃せません!
監督:ロン・ハワード
脚本:アキヴァ・ゴールズマン、デヴィッド・コープ
出演:トム・ハンクス、ユアン・マクレガー、アイェレット・ゾラー、ステラン・スカルスガルド
公開:2009年5月15日(金) 全世界同時公開と
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
ジャンル:洋画
公式サイト:angel-demon.jp
シネマピア:http://asobist.samplej.net/entame/cinemapia/0146.php