『藁の楯 わらのたて』トークショーに大沢たかお、三池崇史監督が登場。松嶋菜々子さんは、誤解を恐れずにいえば男ですよね!”人間のクズ”を演じさせれば世界一の藤原竜也!!


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この春話題のスリル&サスペンス超大作『藁の楯 わらのたて』。記者会見やマスコミ試写では「ハリウッド映画的」と評されている本作の監督・三池崇史と、主演をつとめた大沢たかおのいつもとは違ったトークショー(三池崇史監督 presents大人だけの空間)が、3月21日(木)、都内、六本木のビルボードライブ東京で行なわれた。

三池:こんばんは、ようこそ! 去年の夏に「死ぬかもしれない」という思いでスタッフ、キャストが一丸となって作った作品『藁の楯 わらのたて』が、4月26日に公開されます。それに先立って、本日はお話と映画を観ていただくという企画です。みなさんがなぜここに集まっていただいたかは、だいたいわかっていますので……(会場笑)。さっそく、お呼びしたいと思います。銘苅というSPを演じていただきました、大沢たかおさんです。どうぞ!(会場からは歓声と拍手)


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大沢:どうも! ようこそいらっしゃいました。本日はよろしくお願いします。

三池:でしょ! 思わずイイ男だなって。少しでも引き立て役になれればと……(会場笑)。実はこのイベント、9回目なんです……。あ、そうだ明日の……いろいろありまして先に写真撮影を……(会場笑)。

そして、フォトセッションが行なわれ……

三池:『藁の楯 わらのたて』の成功を祈って乾杯!(『大人だけの空間』はお酒や食事を楽しみながらくつろげるイベント)
大沢さんって、ふだんあまりプロモーションをするタイプじゃないですよね?


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大沢:いえいえ……ものすごく協力的ですよ(会場笑)。
三池:ほんとですか! 今も六本木の劇場で試写会を行なってあいさつをしていただいたんですけど、本業は演じることですけど、プロモーションのときは……どうなんですかこの映画!

大沢:映画ですか? 自分がやってきた作品ってたくさんあるんですけど、こんなに自分の出た映画で出演していることを忘れて、ドキドキワクワク手に汗を握って観たのは初めてですね。2時間がビックリするほどあっという間でしたね。

三池:ほんとですか!

大沢:ほんとうです(笑)。大人の発言になってる……。

三池:すごいね〜。みなさんが思っているより大人ですよ(会場笑)。現場でも、普通は主役は座長だし、「俺を撮って俺を観ろ!」って、俺のための映画だっていうような感じで、スタッフにプレッシャーをかけてくるんですけど、大沢さんは一切ないんですよね。というか、自分の役を演じることに没頭していて、他の人に何かを求めたりしない珍しいタイプ。映画については、これから観ていただくので説明する必要はないかな、と。
それより「今、大沢さんは幸せですか?」(会場笑)

大沢:幸せって、どういう? そういう?

三池:オフとかプライベートな時間に本当に開放されたら何をしている人?

大沢:普通に遊ぶし、散歩もするし、自転車にも乗るし、もちろん映画も観に行きます。困るのは女性の人と一緒にいて、それが会社のスタッフだったりして、仕事の話をしているうちに悩み事を聞いて、そして彼女が泣いたりすると、俺が泣かした感じに見えてしまうので……(会場笑)、何回もそれが報道されて……。

三池:そんなに泣く人は、いないんじゃないの?

大沢:ちょっとした恋の悩みだったんですけど、それを聞いていただけなんですけど、そのあたりは気をつかいますね。

三池:そりゃそうですよ。恋の悩みを大沢たかおに打ち明けて泣いてどうするんだ(会場笑)。


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三池:大沢さんは司会者に厳しい。凄くダメ出ししますよね。プロモーションの司会者は映画会社の宣伝の人とかプロデューサーだったりするので、そもそも司会のプロじゃないんですけど、その人がアタフタするのをプレッシャーをかけて楽しんでる。そういう一面もあるんですよ、みなさん!(会場笑)

大沢:自分はぐうたらでダメダメですけど……。

三池:今日、ゴリゴリにプレッシャーをかけてましたよね。

大沢:そうですね。久々に東京にキャンペーンで戻って来たので、そういう意味でみんなが緊張していたかもしれませんね。

三池:ひどいんですよ〜(笑)。「もっと、次はやわらかくいこうよっ!」って言って、やわらかくすると「そういうやわらかさじゃないんだよね〜」って……。それでまたガチガチになって、でも、そこに集まった人たちはイイ時間を過ごしたかなって感じになっている。

三池:もともと、私は何も考えずに、その時のコンディションで上映前がどうなるか、わからない感じですけど……。以前のトークショーでいちばん酷かったのが、『冷たい熱帯魚』という映画を上映した時に、園子温監督がゲストで、彼はすごくシャイな男で、登場する前に完全に出来上がっている状態で来て、ただ舞台上でクダをまいて帰っていった。凄い修羅場になっちゃって……。今日はみなさんが大沢さんを生で見て、映画で観た後に来て良かったかなって思ってもらえればいいなって思っているんですけど、どうすればイイかわからない……(会場笑)。でも、今回の応募が8000通を越えたんです(会場拍手)。


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三池:では、映画の話をしましょうか?
この映画は原作は小説です。『BE-BOP-HIGHSCHOOL』のきうちかずひろ(漫画原作当時)さん。映画が本当に好きな人で、自分でも何本か映画監督をされていて、今、現在は漫画も描いていないし、監督もしていないんですが、その思いを小説で伝えています。そのデビュー作が、本作『藁の楯 わらのたて』。観ていただければわかると思いますが「これは映画に出来ないよね」ってことばかり書いてあります。それを、どうやって僕らは映画にすればイイんだろうって。日本の映画だとこういった感じに撮りますよっていう、逃げ道はいっぱいありましたけど、僕は悔しくて逃げることが出来なかったということを与えてくれた作品でした。普通、SPというとスーパーヒーローといった感じですが、今回は凄く人間っぽいんですよ。大沢さんから見てSP(警察官)という生き方には、どういったアプローチをかけたんでしょうか?

大沢:イメージだと海外のSPの雰囲気をなぞってしまいそうですけど、原作を読んでも等身大の感じがあって、スーパーヒーローといった現実離れしたものではなく、日本にいて、実際のSPの世界の中の、様式美や礼儀作法などを丁寧に演じていきました。ヒーローを演じるわけではなく、その仕事に就いている人間をみんなで作っていきました。

三池:今回、同僚として松嶋菜々子さんがいて、二人で守るのが“人間のクズ”を演じさせれば世界一の藤原竜也……(会場笑)。いやいや、仕事ですよ〜。クライマックスでありえない展開になるんですけど、大沢さんにとってこの二人の共演者はどういう存在ですか?

大沢:松嶋さんは、誤解を恐れずにいえば男ですよね……。ゴメンナサイ、誤解になりますよね(会場笑)。女性的な部分とか美しさとか、現場に入る前にひとつ気持ちを整理しているような、メイクも髪も気にしていないし、男たちと対等に渡り合おうという強いエネルギーがありました。


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三池:女優さんって、面倒くさいところがある(会場笑)。大変なんですよ〜。出来るだけ男祭りでいきたいなって思っているんですけど、昨今それではお客さんが来てくれないゾっていわれるので……。大女優になると、シーン撮影後に「今のカット見せてもらっても良いですか?」ってことになるんですけど、今回の松嶋さんは、一度もカットになった瞬間に自分がどう写っていたか、確認しませんでしたね。去年の夏は凄く暑かったんですけど、その中で松嶋さんが地べたに倒れていなければならないシーンがって、地面がやけどするくらいに熱く、テストしてから本番の間は一度熱いから起き上がるものですが、テストの時の髪の乱れとか汗とかをやり直さなくてはいけなくなるので、そのまま寝ていてもらうとこちらは助かるんですけど「お仕事しながら岩盤浴できていると思えば幸せです」って笑顔で答えてくれて、凄い大物だなって思いましたね。現場に対してガツガツ求めるんじゃなくて、逆にいろんな経験したことを若いスタッフや現場の人たちに還元するというか、そこにいられる境地に来ちゃっている人ですね。

大沢:役のことに集中していて会うたびに、それが増していますね。いろいろなことが充実しているのかなって思います。純粋に映画を一生懸命やるし楽しむことができているように思います。

三池:けっこうこの映画って重くて、エンターテイメントなんですけど、ズシッときて2時間経った後に“ウ〜ン”っていう感じになります。楽しいんですけどね。そのひとつになった、銘苅たちが命をかけて守る、どうしようもない人間を藤原竜也が演じましたけど、大沢さんからみていかがでしたか?

大沢:もの凄い集中力にビックリしました。清丸という人間のクズを演じているんですけど、なんの違和感もない(会場笑)。

三池:フッ。多分、そういうヤツなんじゃないかな……(会場笑)。芝居ってセリフがあって表情があってですが、この作品の清丸はほとんどなにもしない。清丸の残虐さはみなさんの心の中のどこかに潜んでいる人間の怖さかもしれない。それを彼は、演技をしないという方法で無に近い存在を醸し出していた。

三池:あと、この試写を大島優子(AKB48)に観せて、「この映画だったら大丈夫。大好きです」って言わせたいな〜と思っています。あれ、マジだったんですよ(映画『悪の経典』の試写後に感想を語るイベント)! みんな、仕込みとかいいますけど。えらい騒ぎになっちゃいました。

★最後にひとことお願いします。

三池:我々が全力を尽くして作った、普段の日本映画には出来ないことを、自分たちの常識を一歩壊してみた作品です。最後まで楽しんでください。

大沢:夏に日本と台湾でプロが集まって、ある挑戦をしました。日本映画の爆弾となって、これをきっかけにいろいろな映画が出来たらと思っています。なかなか楽しんでというには、難しい世界がありますけど、みなさん楽しんでいただければと思います。今日はどうもありがとうございました。


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原作:木内一裕「藁の楯」(講談社文庫刊)
監督:三池崇史
製作:日本テレビ放送網、ワーナー・ブラザース映画
出演:大沢たかお 松嶋菜々子
岸谷五朗 伊武雅刀 永山絢斗 余貴美子 /藤原竜也/山崎努
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式HP:www.waranotate.jp
公開:4月26日(金)新宿ピカデリー他 全国ロードショー
 

©木内一裕/講談社 ©2013映画「藁の楯」製作委員会