『我が至上の愛〜アストレとセラドン〜』キャスト来日インタビュー

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ローマ時代、純粋な愛を育んでいた羊飼いのアストレとセラドン。しかしアストレは、セラドンが浮気をしたと疑い、「私の前にもう二度と現れないで欲しい」と拒絶する。絶望したセラドンは入水自殺を図るが、ニンフ(精霊)に助けられ、死を逃れていた…。 ローマ時代の大自然を舞台に若い羊飼いの男女の恋愛を描いた、エリック・ロメール監督最新作『我が至上の愛〜アストレとセラドン〜』。アストレ役のステファニー・クレイヤンクールとセラドン役のアンディー・ジレが来日し、作品への思いを語りました。

090116_02.jpg Q:役柄を演じられて、苦労された点はありますか?
ステファニー
:今回のテキストが古典語だったので文章が長くて苦労したわ。私は演劇の学校などで学んだことがなかったから、台詞まわしを自分のものにするのが大変だったわ。それからテイクが長かったので、最初と同じ雰囲気でキープできるかどうかが難しかったわ。

アンディー:撮影前に台詞を完璧に覚えて自分のものにし、撮影のときにはナチュラルな状態で演技できるようにしておかなければならなかったことだね。監督は必ず1テイクで撮るから、1回のテイクのために自分のすべてを出してしまわなければいけない。それはある意味自由だけど、1回間違えてしまうと後戻りできないという責任感もある。間違う権利はないからね。だから、とても大変な、でもとても興味深い作業だったよ。

090116_03.jpg Q:キャスティングの理由は何だと思われますか?
アンディー
:パリでも、今の時代ではちゃんと発音しない、若者言葉みたいな発音の仕方があるんだ。でも、監督はそうしたファッション的なものに毒されていない、昔ながらの純粋なフランス語のアクセントを喋れる役者を探していて、僕らはそれに合致していたんだ。

ステファニー:私はブリュッセルから来たんだけど、あそこはどちらかというと田舎かもしれないわ。でもそれが新鮮さとなり、無垢なところがあったのが選ばれた理由かしら。

Q:ロメール監督は偶然を生かす方だと伺っていますが、そうしたシーンは実際にありましたか?
アンディー
:偶然に転んだ瞬間、ステファニーのワンピースの裾を掴めたことがあったんだ。雲っていて撮影が難しそうな日も、監督が「撮れる」と言ったら風が吹き、雲が晴れて撮れたときもあったよ。

090116_04.jpg Q:この映画のテーマ、愛に関してはどう思われますか?
アンディー
:人は男や女、そして性などは関係なく、その人そのもの、魂を愛するというのがテーマだと思うよ。ロメール監督にしては革新的なことだね。

ステファニー:自然や忠実さ、愛、そうしたものをすべて包含しているわ。 そこにトリックや見せかけはなく、本当にピュアな、生のままの表現なの。

Q:日本の観客へ向けて、何かメッセージはありますか?
アンディー
:とても詩情があって、初々しさもあり、語られているとこはモダンな部分もある。それはきっと日本の方たちにも気に入っていただけるんじゃないかな、と思うよ。

ステファニー:好きな女性のために水の中に入るみたいな、そんな献身的な、騎士道的な男性は日本の中にもいるのかしら。今ではそうした愛の形はあまりないことなのかもしれないけれど。

Q:アンディーは本作が3作目ということですが、演技はこなれてきましたか?
アンディー
:慣れることは一生ないよ(笑)。毎回毎回が反省の連続で、自信がつくことはなくて全力投球なんだ。

090116_06.jpg Q:ステファニーは音楽の経験があったそうですが、本作でそれが生きることはありましたか?
ステファニー
:役柄の中でも歌っているけれど、それ自体がとても嬉しかったわ。人前で歌うのは苦手だけど、演技と歌、好きなことを2つやれたことがとても嬉しいの。

Q:原作の『アストレ』(1607年に第一章出版、1647年に完全版出版。オノレ・デュルフェによる全5000ページの超大作)以外に何かイメージしたものはありますか?
アンディー
:僕が生まれ育った故郷についてもいえるけど、“自然”というものが僕にとってはとても重要な要素なんだ。意識的にそれを持ち出したのではなく、自然とその要素が僕から出てきたと思うよ。

ステファニー:あらゆるタブーを無視して、いちばん大切なものに果敢に取り組んでいくアストレの姿勢は素晴らしいと思ったの。 名前や地位を取り払って、ピュアな心を求めていく。それはとても共感が得られたわ。

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監督/脚本:エリック・ロメール
出演:アンディー・ジレ、ステファニー・クレイヤンクール、 セシル・カッセル、ジョスラン・キヴラン
公開:1月17日(土)、銀座テアトルシネマ他にて全国順次公開
公式サイト:http://www.alcine-terran.com/wagaai/
配給:アルシネテラン
ジャンル:洋画
シネマピア映画記事:http://asobist.samplej.net/entame/cinemapia/0130.php

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