第1回『いただきます』上映会&イベントが3月10日(土)、Café & Meal MUJI 南青山で行なわれた。
このイベントは、『いただきますTV』のコンセプトである「いただきますの心」を来場したみなさんとともに考え、食の恵み、命の恵みに感謝しながらおいしく味わうことをテーマに開催された。その『いただきますTV』松浦靖氏に話を聞いた。
松浦氏:このインターネットテレビである『いただきますTV』は今年2月に公開され、今回はその告知イベントとして開催しました。昨年の震災以来、どういうことを教訓として受け取っていくかということを考えたところ、今回のテーマである「いただきます」という言葉が浮かんだんです。この言葉は英語やその他の言語にはあまりない言葉で、このひと言の中にたくさんの感謝がこめられています。こんな素晴らしい言葉をもっている日本の文化をみなさんと考えていきたいと思いました。
日本では、新嘗祭という収穫祭にあたるものが11月23日にあり、新嘗祭が終わるまでは新米を食べないという人もいたり、その年の収穫に感謝する習慣があります。今はなかなかそういった感謝の気持ちが伝わらなくなってきているので、そういったことを見直し、食に感謝することを見つめ直そうと思いました。また、それに加え日本文化の良さも合わせて伝えていきたいと思いました。
イベントはサイトでも紹介されている「いただきます」のドラマの上映から始まった。食事の前に「いただきます」と感謝する気持ちを大事にしましょうという提案を、主演の古今亭志ん輔さんが、わかりやすく伝えている。
日本では現在6千万トンの食料が輸入されるも、その内2千万トン近くが捨てられている。これは世界の食料援助の約3倍の量になるという現実を踏まえ、一粒のお米が食卓に並ぶまで、田植えから始まり、数々の行程とそれに携わる人々の苦労を紹介している。また、すべての生き物が他の命から栄養をもらい、その命はすべての命と繋がって支えあっていることも紹介している。
その後、司会の中村美香さん、落語家の立川吉幸さん、古今亭駒次さんによるトークショーが始まり、会場には料理が運ばれ、Café & Meal MUJI 南青山の松岡勇シェフが登場し、シェフからメニューの内容が紹介された。
松岡シェフ:まずは、お味噌汁から紹介させていただきます。ほうれん草のいちばんおいしい根っこの部分を残して調理しています。その部分を食べていただければ、懐かしい土の香りを感じていただけると思います。
ご飯の十穀米ですが、その中にライ麦が入っています。おそらく都内の飲食店では初めてではないでしょうか。サラダは春先ということでベビーリーフを使いました。土壌栽培の土の栄養をたっぷり含んだ味の濃いものです。それに加え無農薬のニンジンはスジっぽさがなく、食感が残る程度に火を通しているので旨味があがっています。広島県産の大長レモンは防カビ剤などを使用していないので皮の部分をドレッシングの中にたくさん擦り下ろしていますので、爽やかな香りが楽しめます。
岩手県産南鶏のオーブン焼きは脂の少ないヘルシーな胸肉を使い、やわらかく仕上がるように九割頃の火入れで止め、後は余熱で仕上げています。それに高知県産の土佐文旦のソースをかけ、さっぱりとした味わいになっています。
ラザニアは、富山港で獲れたアジ、イワシ、トビウオ、タラなどをミンチ状にして使い、トマトとハーブを加えさっぱりとさせています。ミルク豆腐は濃厚な東京牛乳を使ってしっかりとした味わいに仕上げています。
実際に産地を訪れ、どんな人がどんな思いで食材を栽培しているか、直接素材の安全性を確認し、丹精をこめ育てている生産者の思いを、素材の良さを生かした料理を、おいしいだけではなく安心して食べられる料理を提供していくことが、これからの日本に求められていることでしょうと松岡シェフは、食に関する思いを語った。シェフが「人が幸せになっていただけることがこの仕事をしていていちばん嬉しい」と言うように、会場のみなさんにも笑顔がいっぱい見られる食事会となった。
後半は、会場に飾られている新鮮野菜の写真を撮影した、野菜の写真家・中村うららさんの紹介の後、三味線の金山はるさんが加わり、寄席囃子に使われる楽器の紹介や和楽器の演奏が行なわれ、日本文化の素晴らしさを知る内容となった。第2回、第3回と今後が楽しみなイベントである。
(撮影:中村うらら)