早いものでもう6月になりましたねえ。関東地方もついに梅雨入りしてしまったようです。梅雨になると湿気が増えてギターによくないし、洗濯物は乾かないし、持病の腰痛にも響くし……うーん、本格的な梅雨シーズンの前にもう気分がジメジメしてきたので、そろそろ止めておきましょうかね。さて、今回の音楽総研は前回取り上げたRATTの元ギタリスト、ウォーレン・デ・マルティーニ をご紹介!
ウォーレン・デ・マルティーニは現在53歳のアメリカ人ギタリスト。84年にRATTのメンバーとしてメジャーデビュー、RATTが解散していた時期にはWHITESNAKEのメンバーとしても活動しています。80年代、LAメタル華やかなりし頃には、驚異的な速弾きや、印象的なリフ作りでギターキッズから絶大な人気を誇っていました。さらに、物静かな黒髪の美青年という、日本人好みのルックスだったウォーレンは女性からの人気も高く、音楽雑誌ではアイドル的な扱いをされていることもあったほど。
RATTのデビュー当時、まだ中学生だった俺にはギタープレイのなんたるかなど全くわからず、ウォーレンの本当の意味での凄さもわかっていなかったんだけど、それなりにギターが弾けるようになった今、改めてウォーレンのプレイを聴きなおしてみると、その尖り具合に驚かされてしまう。ロック系のギタリストは、たとえHR/HMをやっていても、ペンタトニックスケールというブルーズ調の音階を中心にソロを弾くことが多いんだけど、デビュー当時のウォーレンはそういったスケールをほとんど使わず、他のロックバンドではあまり聴かれなかったようなクールでスリリングなフレーズを弾いている。ウォーレンのギターは泣かない、なんていう批判もあったけど、そんな批判なんてどうでもよくなるほど、ウォーレンのプレイは革新的だった。
しかし、その革新的なプレイは、今にして思えば若さゆえの尖り具合だったのか、セカンドアルバム からはペンタトニック系のフレーズも増えていく。これは決して悪い意味ではないんだけど、ウォーレンのテクニック面での頂点はデビューアルバム だったと言えるかもしれない。それ以降はちょっとスマートになるんだよね。デビューアルバムのレコーディング当時、ウォーレンは弱冠20歳。まだまだ若かったウォーレンは、誰よりも速くとか、誰も弾いていないようなフレーズを……といった、ある意味ではギターキッズ的な考えを持っていたのかも、なんて想像しています。年齢を重ねるごとに、よりソウルフルなプレイを心がけるようになってもおかしくないよなあ。
『You’re in Trouble』
この尖がり具合がウォーレン!
とくにギターソロ終盤のフレーズは真似できない感じ……。
ただ、デビュー当時の尖ったプレイは少しずつ丸くなりつつも、他の凡百のギタリストとは違ったウォーレンは、ブルージーな音使いながらも現代的でスリリング、という彼ならではの斬新なスタイルを編み出し、そのスタイルに合わせたブルージーな楽曲も増えていく。それはそれでカッコ良かったし、真似したくなるようなフレーズがいっぱいあったけど、正直なところ、ブルージーなウォーレンに寂しさを感じてもいた。バンドとしても……個人的に、RATTはヘヴィメタル度の高いハードロックバンドで、ハードなドライヴ感溢れる楽曲こそがRATTの魅力だと思っている。そして、そういった楽曲の大半は、スティーヴン・パーシー(Vo)とロビン・クロスビー(G)、そしてフォアン・クルーシェ(B)が中心になって書かれていて、ウォーレンが書いた『Way Cool Jr.』 のようなブルージーな楽曲は、どれだけ良い曲であったとしても、RATTの本質からはズレているように思う。
『Way Cool Jr.』
ブルージーなギタリストに変身したウォーレンによる名曲(迷曲?)。
初めて聴いたときはびっくりしました。
そして、RATTのビデオにはキレイなお姉さんが出てくるのがお約束。
そして、そう思っていたのは俺だけではなかったようで、80年代後半から、バンドの中心がロビンからウォーレンへとシフトしていったことに対し、一部雑誌やファンの間で批判が起こった。俺も、ロビンが脱退したときには、そんなのRATTじゃない! と思ったけど、今にして思えば、当時のロビンはアルコールやドラッグの問題を抱えていたというし、ウォーレンが中心にならざるを得ない状況だったのでは。まあ、問題が起こる前からウォーレン中心にシフトしていたようにも思うけど、それは最年少だったウォーレンの音楽的成長に伴う変化だったのかもしれないよね。きっと、バンド内でのウォーレンの成長度合いが突出していたんだと思う。
『Body Talk』
現時点での最後のアルバムからも紹介したかったんだけど、
動画があるのはウォーレンが大人しめの曲ばっかりだったので、
3作目から俺のお気に入りを。カッコいいねー。
前回書いたように、ウォーレンは現在のRATTには参加していない。あれだけの才能を持ったギタリストが、このまま埋もれてしまうのはもったいないよ。現時点での最後のアルバム では、ブルージーさがかなり抑えられ、スリリングなウォーレンが戻って来ているように感じたし、なおさらだ。スティーヴンがいないRATTはやりたくないのなら、RATTじゃなくてもいいから、スティーヴンと新しいバンドをやればいいじゃないか。一日も早く、表舞台に戻ってくるのを待っている!