第95回 洋楽編 Michael Schenker――一度は観るべき”狂気の神”、まずは3月にちゃんと来てくれますように

あそびすと読者の皆様、謹賀新年でございます! 決して明るいことばかりとは言えない世の中ですが、この音楽総研が少しでも皆様の楽しい時間を送る役に立てたらいいな、と思っています。今年もたくさん素晴らしいアーティストを紹介しますので、期待していてくださいね! さて、新年一発目は3月に来日予定のマイケル・シェンカーです。……でも、マイケルの場合、あくまでも“予定”なんですよねえ。


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マイケル・シェンカーはその凄腕とエキセントリックな言動から(?)、"神"とも称されるドイツ出身のギタリスト。72年にわずか17歳で兄のルドルフ・シェンカーのバンド、SCROPIONS  でデビューし、それ以降はブリティッシュ・ロックバンドのUFO  や、自身のバンド、MICHAEL SCHENKER GROUP  (以下M.S.G)で活動をしています。フライングV(その名の通りV字の形をしたギター)がトレードマークで、ロックの世界ではフライングVといえばマイケル、というイメージが定着しているほど。

俺がマイケルの存在を知ったのは80年代の半ばごろでした。当時、マイケルは天才ギタリストとして色んな音楽雑誌に載っていて、ギターを始めたばかりの俺は当然チェックしたわけですよ。美しく物哀しいメロディを、歌うように叫ぶように華麗にプレイするマイケルのギターには、一発で魅了されてしまいました。また、金髪碧眼でスラっとした長身のマイケルはルックスもカッコ良くてねえ。そして、ツアー中に失踪しただの、ステージでギターを放り投げてライヴを止めてしまっただのという、とんでもないエピソードの数々にも、田舎の中学生だった俺は芸術家ならではの繊細さだと憧れすら抱いたものです。

ただ、当時のM.S.Gのシンガーがあまりに酷くて、ギターや曲は気に入ったものの、M.S.Gに関してはちょっとした拒否反応を起こしてしまい、いまいちハマらず。まあ、俺が観たビデオも悪かったんだけどね。抜けてしまったシンガーの穴埋めに急遽参加したというレイ・ケネディは、下手じゃないけど、元々AOR畑の人だったらしく、ハードロック向きじゃなかった。井上順が頑張ってロッカー風にしてみましたというルックスも、観るのが辛くなるほど(苦笑)。あれが他のシンガーだったら、すぐにファンになってたんじゃないかなあ。まあ、それでもマイケルの事が気になっていた俺は、遡ってUFOを聴いてみて、改めてマイケルの凄さに気付くんだけどね。で、そのUFOはM.S.Gに比べると、ちょっと地味な印象を持つ人がいるかも……。シンガーのフィル・モグは決して上手い人ではないし、物凄いハイトーンが出るわけでもない。でも、フィルの歌うブリティッシュ・ロック然としたどこか切なさが漂うメロディや、ドラマティックなマイケルのギターは、ハマると抜け出せなくなるような魅力があると思う。


M.S.G『Into The Arena』
ロック・インストゥルメンタルの金字塔。ドラムはコージー・パウエル!

マイケルはSCORPIONSにいたころにUFOにスカウトされ、ドイツからイギリスに渡ったんだけど、まだ18歳で英語もあまり話せなかったというマイケルは、メンバーから孤立し、ストレスからアルコールやドラッグに溺れてしまう。繊細で傷付きやすかったマイケルは、自らの心の痛みを音楽に昇華させ、数々の名盤を世に出したわけだけど、マイケルのドラッグ・アルコール癖のせいなのか、どのバンドもメンバーが安定しない……。それでも、80年代後半のマイケルは子供も生まれてプライベートも充実し、さらにロビン・マッコウリーという長くパートナーとなるシンガーを得て安定していたのか、あまり奇行も聞かれなくなっていたんだけど、そうするとマイケルらしからぬアメリカンな明るい曲を作り出すという困った現象が起こり……身勝手なファンたちは、マイケルは不幸なほうが良い音楽を作る、なんていうことを言い出すわけですよ。でもね、ダメな時のマイケルって、インタビューで「彼女が欲しい」とか言っちゃったりして、ほんとに残念な人になっちゃうんだよね。とほほ。


M.S.G『Cry For The Nations』
レイ・ケネディの絶望的なパフォーマンスが涙を誘う。
似合わないバンドに入れられて、この人も災難だったよね。ちなみにアルバムでは歌ってません

ロビンと別れて以降のマイケルは、紆余曲折ありつつも、定期的にアルバムを発表。しかし、06年、ついにここ日本でもライヴ途中にステージを降りるという事件を起こしてしまう。それまではあくまで海外での出来事として対岸の火事のように思っていたのに、日本も例外ではなかったと気付かされたのでした。マイケルのエキセントリックな言動に憧れていた俺だけど、もういい年だし、そういった言動がロックでカッコ良い! とはさすがに思わない。プロがやることじゃないよなあ。ただ、最近のマイケルは本当に安定しているようで、最新アルバムも良い出来だし、シェイプアップもして健康そう。マイケルは一生に一度は生で観ておきたいギタリストだ。……でもね、本当に来るのかな、来てもちゃんとライヴやってくれるのかな、と、どうもチケットを買うのに二の足を踏んでしまう俺なのでした。


UFO『Rock Bottom』
ロック史上に残る超名曲!
名リフをたくさん編み出したマイケルだけど、個人的にはこの曲のリフが一番カッコいいと思います

※ikkieがなんと「出張ギター教室」を始めてしまいました!
とにかくここから アクセス! 動画もあるよん。
http://dokodemoguitar.com/