暑い日が続きますねえ。わたくし、暑いのほんと苦手です……。そんなわけで(?)、今回は涼しそうな北欧の国々のヘヴィメタルについて解説しちゃいますね。怖い人も出てくるので、寒くなっちゃうかもしれませんけど……。
松本●さて、今度は北ですね、北欧メタル。なんだか、なんとなく(どんなサウンドか)わかる気がするのは段々と勉強してきたからでしょうか(笑)。
ikkie▲北欧メタルっていうのは、言葉のまんまイメージしてもらうと。それこそ歌詞がヴァイキングのことだったりとか、北欧の神話のことだったりとかを扱ってたりするんですよね。で、メロディには透明感があるという。
松本●トーレ・ヨハンソンのプロデュース(THE CARDIGANS など。日本では原田知世なども)、みたいな感じでいいんですか?
ikkie▲そうですそうです。もう、想像通りだと思いますよ。見た目にしても、みなさん色が白くて金髪で。これまであげてきた中ではヘヴィさはちょっと低めなんですけど、北欧と聞いてイメージする、寒いとか透明感があって冷たい感じとか……EUROPEの『The Final Count Down 』とか知らないですかね?
EUROPEの北欧メタル的名曲『Seven Doors Hotel』
松本●ああ、わかります。♪ちゃちゃちゃーんちゃーん、ちゃちゃちゃっちゃっちゃ♪ってやつですね。
ikkie▲……は、はい、それです(苦笑)。あの曲はあんまり、北欧、北欧してないんですけど、あのバンドがまあ、代表格です。あとは前に書いたイングヴェイ・マルムスティーンという人もスウェーデン出身で、クラシックの要素が入ってきたり……"様式美"って言ったりするんですけど、それが北欧メタルのバンドはちょっと強いですね。ドラマティックな展開の曲が多いです。
で、北欧のバンドって、いちばん有名なのはもちろんABBA だと思うんですけど、ABBAとかもメロディがすごくいいじゃないですか。でも、同じメロディアスでも、アメリカのバンド、CARPENTERS とかとはちょっと違う。CARPENTERSってちょっとあの……。
松本●バタ臭い感じしますよね。
ikkie▲そうそう! それがABBAはキラッキラしてる。
松本●うんうんうん。
ROYAL HUNT 『Epilogue』
ザ・北欧メタル! シンガーはアメリカ人ですが
ikkie▲そんな感じです。それがヘヴィメタルにも言える。ちなみに、ABBAが好きだって人、結構多いんですよね、HR/HMミュージシャンに。ABBAのバックでうるさいギターを弾いたら、北欧メタル、って言うとわかりやすいかも。そんな単純じゃないですけど(笑)。
だけど今、北欧でもうひとつ別に起こってるのは、ブラックメタルといって……。オジーの時にちょっと書きましたけど、悪魔崇拝みたいなのが、昔はイメージやファッションとしてあったんですよね。そういうのを、今は本気の人がいるんです。ファッションではなく、本気でやってて、教会に火を点けたりだとか、人を殺して服役していたりとか……。そういうおかしなこともどんどん起こっていて……ま、インテリが多いんでしょうけど、なんか思想が変なふうにね。
松本●極端な思想を持っちゃう人がいるんですね。
ikkie▲それまでのキラキラしたのとは違って、サタンがどうしたとか、本気で歌っちゃってる人たちが出てきてるんですよ。そういうのは(北欧のバンドでも)北欧メタルとは言わないんじゃないかなあ。俺は好みじゃないんで、あんまり聴かないんですけどね。映画とかもあるので 、よかったら探してみてください。
ブラックメタルの代表的なバンド、MAYHEM
松本●やっぱり、人って音楽にしても政治にしてもそうなんでしょうけど、ひとつの(目立つ)ものがあると、対極の物が出てくるんですかね。
ikkie▲ほんとにそうですね。……でもね、前に所ジョージの番組でフィンランドのことを特集してたんですけど、フィンランドは世界でいちばんヘヴィメタルが人気がある国だっていうのをやってて。ま、他にロックンロール系のバンド も人気があるみたいですけど、でもまあ、メタルが凄い人気なんだ、と。昔ながらのヘヴィメタルをやってる人たちが凄く多いんですよね。もしかしたら、地域的にアメリカとかの影響を受けにくいのかもしれない。
松本●ああ、それはあるのかもしれないですね。ヴァイキングとかがいて、近海を守るという伝統もあるんでしょうか。で、よりイギリスに近いわけですから、イギリスのほうから渡ってきたものがある種の進化をして、北欧メタルになって。例えばロサンゼルスあたりの……そこがいつも例になってますけど、そこのきらびやかなものも当然入ってくるんだろうけど、そこにはちょっと一線が張ってあるっていうのが……。
ikkie▲ハマりきれないんでしょうね。俺、常々思ってるんだけど……昔ね、四畳半のアパートに住んでたころにVAN HALENの新譜 が出たんですけど、それを聴いても良いと思わなかったんですよ。VAN HALENが大好きなのに。悪くはないけど、ふーん、って感じで。でも、同じころにロサンゼルスに行った友達が、オープンカーに乗ってたらVAN HALENのその新譜がラジオでかかって、それがすっげーカッコ良かったって言うんですね。それ聞いて、ははあ、と。わかんないんですよ、畳の部屋でVAN HALENって。
日本でも、海岸なんかで聴いてる分にはいいかもしれないですけど。家で聴いても、当然、カッコいい! とはなるんだけど、なんていうのかな、イギリスのバンドとかの、どんよりした暗い曲のほうが感情移入しやすい。アメリカの明るい音を……例えば俺なんて金沢出身なんで、雪が降ってる中で『Califonrina Girls 』とか聴いても、ピンと来ない(笑)。もう、聴く場所で(印象が)全然違うんじゃないかな。
TNT『10,000 Lovers』
キラッキラ! シンガーはアメリカ人……
松本●なるほどなるほど。そう聞くと、場所、場所という言い方ばかりしてますけども、聴く人もそうだし、やる人もそうだし、全部そこの土地柄に合ったものとして、いろいろ進化を遂げていった形っていうのが今の音楽のシーンだっていうことになるんですかね? 順に聞いていくとすごくわかりやすい。ジャーマンメタルが一番でしたけど、北欧メタルのところまできたら、もう確実にこういうんだろうなって、思いましたね。まあそれこそABBAぐらいしか思い浮かびませんでしたけど、ABBAっぽい感じなんだろうな、っていうのがほんとにその通りだっていう。
……というわけで、今回はここまで! 編集部松本氏がそうだったように、みなさんもそろそろ地域ごとのサウンドの違いが予想出来るようになってきたんじゃないでしょうか。次回はいよいよ極東、日本のHR/HMについて解説しちゃいます。
※ikkieがなんと「出張ギター教室」を始めてしまいました!
とにかくここからアクセス! 動画もあるよん。
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