ミス・ポター

【『ピーター・ラビット』スルメ論?!】
本作で『ピーター・ラビット』の生みの親を演じるレニー・ゼルウィガーだが、全米脚本家協会のストライキの影響で来日がキャンセルされてしまった。このストライキの影響で、レニーの新作撮影が1ヶ月前倒しになったからだ。

そういえば『ファンタスティック・フォー2〜銀河の危機』のジェシカ・アルバとヨアン・グリフィズも、同じ理由で来日が中止となっている。脚本家協会のストライキ、脚本家協会のストライキ、脚本家協会のストライキ。これって映画業界にとっては目の上のタンコブ的存在? 実は無理をすれば来日は可能だったけれど、今後もストライキとやらをされたらかなり迷惑な映画業界が、わざと見せしめとして“来日中止”を決行し、「この?、脚本家協会のストライキ野郎め、ケシカラン! プンプン!」と、映画ファンたちの怒りの矛先をストライキ野郎たちに向けさせ、将来的にはストライキ自体を収束させようという狙いがあったのでは?…なんて、穿って考えすぎですか。はい。失礼しました。

そんなこんなで残念無念の来日中止になってしまったレニー・ゼルウィガーが、本作では主演のほかにエグゼクティブ・プロデューサーも務め、苦悩多き作家を熱演。
無から有を作りだす作業はすなわち、このゴツゴツとした現実世界に、作家の内面にあるやわらかな別の宇宙を作りだし解き放っていく作業である。クリエイターとはある種の“神”であり、創作活動とは“ビッグ・バン”であり、それを実際には神ではなく“人間”が行うのだから、ときには自分が潰れてしまうような膨大なエネルギー、尋常でない精神力を要する作業なのである。
全知全能ではなく“半知半能”な人間が、ひとつの世界の創造主となるわけなので、ときには不安で胸がいっぱいになったり、自分はダメだと思いこんでみたり、やっぱり大丈夫だと自信を持ってみたり…。そんな紆余曲折を経ながら、作品という“世界”に、噛めば噛むほどに増してくるスルメのような“味”が作られていく。『ピーター・ラビット』がスルメのように長らく愛され続けてきたのは、作者自身のスルメ人生が作品のそこかしこに滲み出ているからであろう。

実際の作者の人生はもっともっとドロドロして、聞くに堪えないものだったかもしれないとは推測されるが、本作では“動くピーター・ラビット”との兼ね合いからか全体が小奇麗に描かれすぎており、ドラマとしては少々物足りない。恋人役はユアン・マクレガーだが、特に中盤は彼の描き方が足りず、主人公の人生に重大な影響を与えたことが“事実としては”伝わってくるが、“感情としては”伝わってこない。やはりスルメはスルメらしく、コテコテの演歌調で攻めて行って欲しかったのである。

ミス・ポター(DVD)
ピーターラビットのおはなし(単行本)
原作:MISS POTTER
監督:クリス・ヌーナン
出演:レニー・ゼルウィガー /ユアン・マクレガー /エミリー・ワトソン
配給:角川映画株式会社
ジャンル:洋画
公式サイト:http://www.excite.co.jp/cinema/miss-potter/

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