世界最速のインディアン

小さな小屋に一人暮らしの63歳のおじいちゃんが、インディアンという名のポンコツバイクを独力で改造し続け、世界最速記録に挑戦しようとする実在のサクセス・ストーリーが本作だ。
今まで変質者や神経質な人間ばかりを演じてきたアンソニー・ホプキンスが、自身の映画史上初めてともいえるハッピーな男を好演した話題作である。

そういえば、犯罪モノではないヒューマン・ドラマ『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』でも風変わりな悲しい老人を、『アトランティスのこころ』では、少年との心を通わせる不思議な力を持つ老人を、それぞれ演じている。確かに、本作のように底抜けに明るい役どころのホプキンスは初めて目にする。それだけでもなかなかの見ものだが、夢に果敢に挑戦するおじいちゃんを、ホプキンスの演技力があたたかく描きだし、観る者の心に“人生は捨てたものじゃない”というメッセージを力強く残してくれるのだ。

珠玉の台詞も満載だ。「夢を追わない人間は野菜と同じだ」「危険が人生に味をつける。リスクを恐れてはいかん」「やる時は、やるっきゃない」「顔にしわはあっても、心はまだ18歳だ」。何もかもを完璧にこなすスーパーマンではなく、何をやってもダメダメなおじいちゃんが放つこの台詞は、格好や体裁、そして夢に向かう過程で犯してしまうミスがどんなに多くても気にすることなく、とにかくがむしゃらに生きていくことの大切さを教えてくれる。
常識なんかに囚われずとも、成功を手にすることは万人に可能なのだ、と。
熱い熱いおじいちゃんのホットなパフォーマンスから、手ごたえのある勇気をもらえる作品だ。ぜひ劇場でご覧いただきたい。

世界最速のインディアン スタンダード・エディション(DVD)
監督:ロジャー・ドナルドソン
脚本:ロジャー・ドナルドソン
出演:アンソニー・ホプキンス/クリス・ローフォード/アーロン・マーフィー
ジャンル:洋画
公式サイト:http://www.sonypictures.jp/movies/