通常、マスコミ試写というのは開演の30分前に会場入りすれば、余裕綽々で好きな席に座ることができる。だが、本作は事前に映画会社から案内を受けた。30分前でも満席になる可能性があるので、もっと前に来て欲しいという。作品の評判がよく、普段は来られない方も多数、来場しているからだそうだ。
おそるおそる、いつもの30分前に到着してみた。確かに、すでに席は半分以上が埋まっていた。しかも、マスコミ関係者ではなく、どう見ても普通のサラリーマンの姿が目立つのである。あとで聞いたところによると、「タイアップ先の企業の方ではないか? こうした大規模な映画はタイアップが非常に多いので」とのことだった。どうでもいいのだが、隣の席でワイシャツのポケットからケータイ電話の灯りをチカチカと点滅させる御仁には参った。ところは暗い場内である。気になって気になって仕方がないではないか。
…と、マナーの悪さが目立った試写ではあったが、作品自体はとても素晴らしく、存分に楽しめた。身の毛もよだつほどの斬新な殺戮方法、大胆かつ緻密なアクション、タブーとも言える“スパイの愛”を根底に携えたストーリー展開、“家庭と仕事”という我々の日常を示唆するかのようなドラマ。1作目のサスペンス性と2作目のアクション性を兼ね備えた本作は、「シリーズ中いちばんスパイらしい映画」、「エンタテインメントの王道」等々の前評判どおりシリーズの集大成とも言え、文字どおり“手に汗にぎる”スリルを存分に味わえるのである。
すべてのスタントを自分で行っている主演のトム・クルーズ、そして新人とは思えない監督の手腕にも脱帽だ。
また、シークレット・ウェポンとしての女スパイ、ゼーンを演じるマギー・Qの美しさ、存在感は特筆に値する。これまで数々のスパイ映画でたくさんの女スパイが画面を賑わしてきたが、彼女こそがその最高峰であるといっても過言ではない。アメリカ人とベトナム人のハーフである顔立ちは独特の趣を見せ、その演技は作品に深い味わいを加えている。見ているだけで幸せになれるほどの美女はそう多くはない。彼女はまさにそうした魅力を持ちあわせた稀有な女優なのである。
M:i:III(DVD)
監督:J. J. エイブラムス
出演:トム・クルーズ/フィリップ・シーモア・ホフマン/ヴィング・レイムス
配給:UIP映画
ジャンル:洋画
公式サイト:http://www.missionimpossible.com/intl/