映画の興行成績を決める重要な役割のひとつに、“プロモーター”という存在がある。文字通り、プロモーション=宣伝を行う人たちである。この映画『タイヨウのうた』では、ひと味ちがったプロモーションスタイルが話題を呼んだ。ギターをかき鳴らしながら歌う主人公を目標に、ギターを弾けない二人のプロモーターが演奏に挑戦し、映画公開までには主題歌を弾き語るという、業界初「歌う宣伝」をやってのけたのである(「タイヨウ兄弟が行く!」)。
たった二ヶ月という短い期間で弾き語りに成功したのは、やはり良き指導者に出会えたからだろう。二人のプロモーターが門を叩いたのは、「楽器挫折者救済@」。“困難は避けて通る”をモットーに、楽器を触ったことのない人でもたった二時間でお望みの楽器を演奏することができるとして、新聞やテレビなど各メディアで取り上げられている「Q-sai@(キューサイアットマーク)」。公式ブログでも救済合宿の模様が余すところなく綴られており、音楽に興味がある人なら心から共感できる内容になっている。
Q-sai@の講師として数々の楽器挫折者を救済してきたきりばやしひろき氏は語る。
「そういったことでご縁があってこの映画を拝見したのですが、文句なしに素晴らしい作品でしたね。僕は映画に関しては、観る前にあまり前知識を入れたくないタイプなんです。たとえそれが『いい作品だよ』のひと言だけだったとしても。でもこの映画に関しては自分から周りに言っちゃいますね。『いい作品だから、みんな観てね』って。」
本作は音楽と密接に関わっているだけに、ミュージシャンとしてのきりばやしさんも、余計に心を打たれたのだろう。
色素性乾皮症(XP)に犯された主人公は、歌うことが大好きな16才の少女。病気のせいで太陽に当たれない彼女は、夜になると出かけ、路上でギターを弾き語るのだった。…と、ともするとただのお涙頂戴で終わってしまいそうなこのストーリーも、主人公を演じるYUIの透明な歌声、そして出演陣の確かな演技力が相まって、生きることの大切さが心に染みるこの上ない作品に仕上がっている。一般試写会でもすすり泣く声がそこかしこから聞こえた。…そう、この映画はお涙頂戴ものではなく、心の底から確実に泣ける一本なのである。
その作品力に影響されたQ-sai@側がこの映画のファンのために用意した合宿(「楽器挫折者救済合宿 in 西湖 映画『タイヨウのうた』スペシャル!(開催日=7/8〜9)」)も、映画公開前ながらもうすぐ定員に達してしまうほどの勢いだという。きりばやし氏も驚きながら語った。「劇中に流れる『Good-bye days』という楽曲があるんですが、これがとても重要な役割を果たしているんです。タイヨウ兄弟も歌っていることですし、せっかくなら映画の醍醐味も味わっていただこうと企画したこの合宿でしたが、こんなに申し込みが殺到するとは。やはり、作品の影響力というものを感じずにはいられないですね。」
異例なことに、映画公開前にドラマ化も決定するなど、早くもブレイクの予感が漂う本作。ぜひ劇場でチェックし、爽やかな感動を体感していただきたい。
タイヨウのうた プレミアム・エディション(DVD)
監督:小泉徳宏
出演:YUI/塚本高史/麻木久仁子
配給:松竹
ジャンル:邦画
公式サイト:http://www.taiyonouta.jp/
© 2006「タイヨウのうた」フィルムパートナーズ