名門女子校で転落死した女子高生、その原因を探る父親、浮かび上がる一人の邪悪な同級生――。野生時代フロンティア文学賞を受賞した究極の心理サスペンスが、実力派キャストを迎えて待望の映画化!
大学で行動心理学の教鞭を取る安藤(内野聖陽)は、娘(吉田美佳子)が高校のベランダから転落死したとの一報を受ける。妻に先立たれたとはいえ、父娘ふたりでそれなりに幸せに暮らしてきたつもりの安藤にとって、娘の死は到底受け入れがたい現実だった。事故か、自殺か、それとも……? 真相を探るべく行動を開始した安藤は、娘の友人である一人の同級生(吉本実憂)の存在を突き止める。
今回は、映画よりも先に原作の小説を読ませていただいた。というのも、実は、葛城ユキさんが歌う全編英語の挿入歌『Freedom』を私が作詞させていただいたのだ。監督曰く「原作からは結構変えており、娘の同級生は原作よりもっと狡猾」とのこと。歌詞制作中に本編のダイジェスト映像を監督が見せてくださったのだが、確かにその言葉どおり、主要人物である同級生は爬虫類かのような冷たい体温を思わせる、ゾッとする演技力で魅せてくる。原作も相当面白かったのだが、脚本は監督自身によるもので、キャストらが発する台詞も原作からかなりアレンジされており、短いダイジェスト映像ながらも一瞬でおぞましさがこみ上げてくるほどだった。そうした監督の意向を体現させていただくべく作り上げた歌詞を、伝説の(そして私にとっては憧れの)ロックシンガー、葛城ユキさんが歌い上げる。レコーディングの際にボーカルディレクションのお手伝いもさせていただいたのだが、葛城さんの生歌の素晴らしいこと素晴らしいこと。これがCDでもなくラジオでもなく、すぐそばのレコーディングブースから聴こえてくる歌声だという事実。もしかしてここはこの世じゃないんじゃないか? なんて錯覚さえ覚えるほど、至福のひと時を体験させていただいた。感謝しきりである。
……と、ダイジェスト映像の時点でかなり面白そうだったので本編の出来上がりを首を長くして待っていたが、期待に違わず、素晴らしいおぞましさだった。まず冒頭、病院での医師らによるシーンが変に芝居じみておらずあまりにもリアルで、ガッツリ心を掴まれる。すでにそこで「世界」を作り上げ、ぐいぐいと観客を引き込んでいく。 また、原作では同級生の少女の比重が大きかったが、映画では父親がメインになっており、その父親が徐々に徐々に壊れていくさまがなんとも痛ましい。同級生はといえば、その美しい容姿をつるんと剥いたら中身は蛇だ。その憎たらしいこと、腹立たしいこと。プロデューサーによれば「監督は政治力より演技力しか頭にない」そうで、これはキャスティングの勝利だろう。むしろ、そうでなければ映画は成り立たないのだから。
関係者だからベタ褒めしているわけでは決してない。大の大人の男と、年端もいかない少女との心理戦が極上の化学反応を生み出しているサスペンス。スクリーン上で発生した「毒」は観客の心に深く染みこみ、容易には抜けないだろう。
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映画「罪の余白」挿入歌『Freedom』を、LINDENが作詞!
原作: 芦沢央『罪の余白』
監督・脚本:大塚祐吉
出演:内野聖陽、吉本実憂、谷村美月、葵わかな、宇野愛海、吉田美佳子、堀部圭亮、利重剛、加藤雅也
配給: ファントム・フィルム
公開: 10月3日(土)、TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー
公式サイト:http://tsuminoyohaku.com/
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