ディス/コネクト

20140407cpicm.jpgSNSをきっかけに起きた事件から、見えない闇が次々と露わにされていく……。監督も脚本家も無名ながらその作品力を高く評価され、ベネチア映画祭で10分にもおよぶスタンディング・オベーションを受けたほか、ニューズウィーク誌にも「今年度ナンバーワン」と言わしめるなど、各有力誌から軒並み大絶賛を浴びた本作。キャストでもハリウッド大作に度々出演するそうそうたる実力派俳優が集結するほか、デザイナーのマーク・ジェイコブスが異色の役柄で俳優デビューを果たしたことも話題に。繋がっているようで繋がっていない、見かけだけの繋がりという“錯覚”を、丹念に掘り下げた群像劇の傑作だ。

幼いわが子を亡くしたトラウマから、互いを避けるようになってしまった夫婦。妻の心を癒やすささやかな楽しみといえば、顔も本名も知らない見知らぬ相手とのチャットだけだった。ある日、出張に出かけた夫が自分のクレジットカードが使えないことに気付く。何かの間違いではないかと思い、妻に電話をしてその理由を尋ねる夫だったが……。

20140407cpic1.jpg原題の『Disconnect』とは、「切断」や「食い違い」の意。要するに「繋がっていない」状態のことだ。本作の切り口となっているのは、SNSやチャット等、ネット上での見かけ上の繋がりだ。人間というのは不思議なもので、普段から顔を突き合わせている表面上の“友達”とは心が通じ合えないことがあるのに、会ったこともない誰かには親密な打ち明け話をする。これは相手に向かって、というよりは、日記を書いている感覚に等しいだろう。目の前に誰かの顔があるわけではなく、ただ画面に向かって自分の心情を言葉にしているから、ついつい「人の目を気にすることなく」心情を吐露してしまう。また、実際の自分が何者かということをすべてさらけ出していないからこその安心感というものもあるだろう。まったくもって、身につまされるといったらない。微に入り細に入り、いちいち頷けるドギツイ内容をこれでもかこれでもかとぶち込んでくる。ハリウッドものと違い、ありえない夢物語で白けさせることも一切ない。我々が普段目にし、体験している現実を容赦なく突きつけてくれる。

群像劇といえば『クラッシュ』のポール・ハギス監督の新作『サード・パーソン』も6月に日本公開を控えている。だが、これに負けず劣らず、それどころか肩を並べるほどの大傑作を、“今はまだ”さほど有名ではない脚本家が迫力の筆致で見せつけてくれた。そしてそれに呼応して有名どころの俳優たちが参集し、フレッシュな才能を持ち合わせた監督が起用され、作品に命が吹き込まれた。監督は俳優がアドリブで繰り出した台詞を積極的に採用したという。それが功を奏した部分は多々あっただろう。互いが互いをリスペクトし合いながら出来上がった大傑作。えぇ、もちろん号泣しましたとも。

ネット上で繰り広げられるいじめは、何も日本だけの問題ではない。本作の舞台となったアメリカでもご多分に漏れず、ネットいじめが原因で自ら命を絶つ者が続出している。本作がそうした現象への警鐘となり、匿名をいいことに他者に暴言を浴びせるというネット文化の犠牲者がこれ以上出ることのないよう、切に願うばかりだ。


監督:ヘンリー=アレックス・ルビン
脚本:アンドリュー・スターン
出演:ジェイソン・ベイトマン(『ハンコック』『マイレージ、マイライフ』)、リディア・ボイド(『リアル・スティール』)、フランク・グリロ(『マイノリティ・リポート』『エンド・オブ・ウォッチ』)、ミカエル・ニクヴィスト(『ミレニアム』)、ポーラ・ハットン(『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』)、アンドレア・ライズブロー(『オブリビオン』)、アレキサンダー・スカルスガルド(『バトルシップ』『ザ・イースト』)、マックス・シエリオット(『クロエ』『ボディ・ハント』)、コリン・フォード、ジョナ・ボボ、ヘイリー・ラム
配給会社:クロックワークス
公開: 5月24日(土)より、新宿バルト9他にて公開
年齢区分: PG-12指定
公式HP:http://dis-connect.jp/
 

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