数々のヒット作を世に送りだした現代の天才J.J.エイブラムス監督が、『戦火の馬』、『裏切りのサーカス』に出演、そしてテレビシリーズ「シャーロック」で大ブレイクの英国俳優ベネディクト・カンバーバッチを世紀の悪役に配して作り上げた『スター・トレック イントゥ・ダークネス』。前作の『スター・トレック 』やテレビシリーズの「スター・トレック」を知っていなくとも存分に楽しめる、この夏イチオシのエンターテイメント大作だ。
西暦2259年。カーク船長(クリス・パイン)率いるUSSエンタープライズ号は、未開惑星の探査中に地殻変動に見舞われる。副長スポック(ザッカリー・クイント)と原住民を助けるべく、カークは重大な規則違反を犯す。同じころ、ロンドンでは宇宙艦隊データ基地が何者かによって爆破される事件が起きる。サンフランシスコの艦隊本部に召集されたカークたちは、真犯人ジョン・ハリソン(ベネディクト・カンバーバッチ)の捕獲を命じられるが……。
スポック船長のトンガリ耳とカマキリ眉毛の特徴を覚えてはいても、「スター・トレック」がなんたるかを知る“トレッキー”と呼ばれるマニアなファンは、日本ではそう多くはない。『スター・ウォーズ』等に比べ、知名度はさほど高くはなかったのが実情だ。だが、あのJ.J.エイブラムスが前作『スター・トレック』をリブートさせ、オリジナルシリーズの精神を引き継ぎながらも、テレビシリーズを知らないゼロからスタートのイチゲンさんが観ても大いに楽しめる作品とすることに成功した。その次作に当たる本作も、テレビシリーズはおろか前作を観ていなくとも、笑って泣いて手に汗握れる、文句なしの大傑作に仕上がっている。
ストーリーの重要な鍵を握るのが、本作で初のアクションに挑む悪役のベネディクト・カンバーバッチ。彼を表紙にした映画誌は必ず部数が爆発的に伸びるという、今まさに世界的に旬を迎えている俳優だ。一理ある信念を胸に行動するテロリスト役だが、悪役にも関わらず主役級の扱いでクローズアップされている。本作での鍛えられた肉体とキレのある動き、そして陰影のあるキャラクターにベタ惚れするファンが、これを機にまたしても増えることだろう。だがもちろん、カンバーバッチは客寄せパンダ的立ち位置で本作に参加しているのではない。エンタープライズ号クルーのすべてとカンバーバッチ一人をそれぞれ天秤にかけても、パワーバランスが同等になるほどの存在感とオーラとカリスマ性と演技力。「シャーロック」を観たJ.J.が惚れ込んで起用したこの逸材は、ブラックホールのような破壊的吸引力で観る者を魅了してやまない。実は、カンバーバッチのシャワーシーンも撮影されたそうだが、何故かカットされたとのこと。後に発売されるDVDへの収録が期待される。
スペシャル・プレビューで来日したカンバーバッチスケジュールの都合で8月のジャパンプレミアに参加できないカンバーバッチは、一足先に7月に来日。7月16日に行なわれたスペシャル・プレビューの舞台挨拶では、7月19日が37歳の誕生日という彼に、エンタープライズ号を模したバースディケーキが贈られるというサプライズ演出。飾りのカンバーバッチ人形をその場で食べて「僕はおいしいね!」と発言するなど、ファンサービスというよりは自らがイベントを楽しんでいる様子。こうした舞台裏での気取らない性格と、表での演技力とのギャップ。それこそが彼の絶大な人気の源のひとつだろう。
正義と正義が拮抗し、一筋縄ではいかない複雑なドラマが繰り広げられる本作。この夏、決して外してはならない傑作だ。
監督:J.J.エイブラムス
脚本:アレックス・カーツマン/ロベルト・オーチー/デイモン・リンデロフ
出演:クリス・パイン/ザッカリー・クイント/ゾーイ・サルダナ/ベネディクト・カンバーバッチ/ジョン・チョウ/サイモン・ペッグ/カール・アーバン/ピーター・ウェラー
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
公開:8月16日(金)、17日(土)、18日(日)お盆先行公開
8月23日(金)よりTOHO シネマズ日劇ほか、全国超拡大ロードショー
公式サイト:www.startrek-movie.jp
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