クラウド アトラス

20130314cpicm.jpg幾代にも渡って転生する魂たちが、それぞれ絡み合う。ときには転落し、ときには成長を繰り返しながら……。『マトリックス 』3部作のウォシャウスキー姉弟監督と『ラン・ローラ・ラン 』のトム・ティクヴァ監督がタッグを組み、キャストにトム・ハンクス、ハル・ベリー、ヒューゴ・ウィービング(『マトリックス』シリーズ)、ベン・ウィショー(『007 スカイフォール 』)、ヒュー・グラントらを迎えて編み上げた、壮大な感動巨編。

20130314cpic1.jpg静かな星空の夜。厳かに燃える焚火の前で、初老の男ザックリー(トム・ハンクス)が自身の半生を語り始める。なぜ、自身の左目に大きな傷があるかということを。彼はもちろん、ザックリーとしての人生の記憶しかない。だが物語はその後、彼の魂の転生を映し出していく。彼の妻や家族、近しい人々と交わってきた数々の魂の記憶を……。

輪廻転生。これを信じる人、信じない人、様々であろう。私はといえば、信じるクチだ。親から受け継いでいるわけでもなく、環境によって左右されたわけでもなさそうな性質を自分の中に発見するとき、この考えはより強固なものになる。きっとこれは、前世で培われた個性なのだと。そう思うとき「来世のために、今のこの人生をより良きものにしていこう」と、怠惰に流されそうな自分を奮い立たせることができる。また「人生は一度きりだから、自分さえよければそれで構わない」という我儘な考えも捻じ伏せ、自分を律しようと思える。実践はなかなか大変なわけだが……。

6つの時代が並行しながらストーリーは進んでいく。同じ魂であることを強調するため、各人の肌の色が変わろうが性別が変わろうが、すべて特殊メイクで対応。冒頭の老人はトム・ハンクスであることが一瞬わからないほどの化けようだ。どの役が誰かと解き明かしながら見ていくのは、なかなか新しい楽しみ方だ。だが、誰が誰だかイマイチわからないまま時代も目まぐるしく変わり、映画だけでストーリーを把握するのはなかなか困難だ、というのが正直なところだ。原作込みで楽しんだほうが、より満足の度合いもあがるだろう。

これだけの錚々たるキャストでありながら、残念ながら本年度のアカデミー賞はノミネートもされず完全無視。ウォシャウスキー兄が「姉」に性転換したのが嫌われたからかどうかは定かではない。米TIME誌が選んだ今年のワースト映画でも、残念ながら1位に輝いてしまったという曰くつきの作品でもある。だが、こうした評価が出た作品は、往々にしてハマってしまうほどの大ファンを作り出す傾向がある。東洋人メイクは押しなべて目が小さくなっていて、不自然この上ない。とはいいつつ、ジム・スタージェス扮する革命家がこの上なくジェントルで、夢に出てきて欲しいほど惚れてしまいました(ハート)。私としてはお薦めの一品だ。


原作:デイヴィッド・ミッチェル『クラウド・アトラス』(河出書房新社刊)
監督・脚本:ラナ・ウォシャウスキー/アンディ・ウォシャウスキー/トム・ティクヴァ
出演:トム・ハンクス/ハル・ベリー/ジム・ブロードベント/ヒューゴ・ウィービング/ジム・スタージェス/ペ・ドゥナ/ベン・ウィショー/ジェイムズ・ダーシー/ジョウ・シュン/キース・デヴィッド/スーザン・サランドン/ヒュー・グラント
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開:3月15日(金)、新宿ピカデリー・丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
公式HP:www.cloudatlas-movie.jp
 

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