人質に取られた大使館員を救出するための作戦、それはニセ映画作戦! 嘘の映画をでっち上げ、そのスタッフと称して彼らを助け出すのだ。コメディのようなこのストーリーは、れっきとした事実。『ザ・タウン』のベン・アフレック監督・主演、ジョージ・クルーニー製作で贈る、映画ファンなら大満足必至の痛快なエンタメ作。
1979年11月、イラン。悪政に虐げられた国民が牙を剥いた。癌治療のためにアメリカに入国した前国王パーレビの引き渡しを要求し、過激派がアメリカ大使館を占拠し人質を取ったのだ。しかし、混乱の中で逃げ出すことに成功した6人のアメリカ人は、やむなくカナダ大使の自宅に身を隠すことになる。CIAの救出作戦のエキスパート、トニー・メンデス(ベン・アフレック)は彼らを無事に救出する策を考えあぐねていたが、偶然にとある作戦を思いつく。それは、ニセ映画のスタッフとして彼らを出国させるというものだったが……。
娯楽としての側面でなく、作品としての立ち位置を大いに評価できる点がある。冒頭のナレーションが告げる、なぜイランとアメリカはこのような関係に陥ったのか、の説明だ。多くのハリウッド映画は「アメリカ万歳」を旨とし、演出に多少の無理や矛盾が生じてもものともせず、「アメリカこそが正義」という姿勢を打ち出してきた。だが本作は、「暴君パーレビを匿った悪者」としてアメリカを暗に批判する。単純にイランが悪でアメリカが善、というよくある子供だましの設定で作られてはいない。これを踏まえた上で展開されるその後のストーリーが、ただの感動的な成功物語としては終わらない深い味わいを醸し出すのだ。
本編はといえば、これが事実だとは思えないほどに突拍子もなく、シリアスでありながらエキサイティングなスリルにもあふれ、無論、コメディの要素も備えている。イランとアメリカ、時系列を交互に映しながら迎えるクライマックスはまさにハラハラドキドキもの。まさかこの手の作品で涙腺が緩んでしまうとは、夢にも思わなかったのである。
監督:ベン・アフレック
脚本:クリス・テリオ
製作:ジョージ・クルーニー/グラント・ヘスロブ/ベン・アフレック
出演:ベン・アフレック/アラン・アーキン/ブライアン・クライストン/ジョン・グッドマン
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開:10月26日(金)、丸の内ピカデリー他全国ロードショー
公式HP:www.argo-movie.jp
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