スポーツの秋、食欲の秋、読書の秋、芸術の秋、映画の秋。暑くてダレてしまう夏と違い、やはり涼しくなるといろいろと活動しやすくなるものだ。そんな秋にピッタリの、五感をこれ以上ないほどに刺激するエモーショナルな大傑作がお目見えだ。
底辺作家のエディ(ブラッドリー・クーパー)は、出版契約を交わしながらも一言も書けずに自堕落な生活を送るだけの日々を繰り返していた。
そんな彼に愛想を尽かし、恋人も彼のもとを去っていく。希望も目的もないまま街を彷徨うエディは、偶然にも前妻の弟と出くわす。窮状を見かねたその弟は、エディに怪しげな薬を差し出した。通常は20%しか使われていない人間の脳を、100%活性化させる薬だというが……。
本作には、豪華二大スターが競演している。一人は『ハングオーバー』シリーズや『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』で、もはや知らない人はいないほどの実力派イケメン俳優の名をほしいままにしているブラッドリー・クーパー。
本作では、夢ばかり追いかけて仕事もろくにしない浮浪者まがいの前半と、薬を手に入れてからの別人のような成功者とを巧みに演じる。もう一人は誰もが知る大スター、ロバート・デニーロ。有無を言わせぬ風格で、エディと絡む大物投資家役としてストーリーに光と影を投げかける。
特筆すべきは、その映像のマジックだろう。原作は全米ベストセラー小説の『ブレイン・ドラッグ』だが、まるで本を読んでいるかのように、エディの頭の中が具現化されていく。よくあるドラッグもののように幻想的で曖昧な映像が広がるのではなく、“脳が100%活性化”されたなら実際はこんな感覚なのだろうな、という絶妙なラインでそれを表現している。どうりで、全世界7カ国で初登場1位を記録してしまうわけだ。監督の手腕に思わず「Cheers」と呟きたくなってしまう。この超絶映像は、大画面の劇場でご覧いただくことをお薦めする。
“活性化”と言えどその能力はもともとの個人の能力の目一杯だそうで、金貸し屋の発する言葉はおかしくもあり、悲しくもある。もしその薬が手に入ったら、自分はどこまで進めるのだろう?
また、自分の道は路線を変えるのだろうか? ……そんな幻想を抱きつつ楽しめる、極上の逸品。私個人的には今年いちばんの映画だ。
原作:アラン・グリン『ブレイン・ドラッグ』
監督:ニール・バーガー
脚本:レスリー・ディクソン
出演:ブラッドリー・クーパー/ロバート・デニーロ/アビー・コーニッシュ/アンナ・フリエル
配給:プレシディオ
公開:10月1日(土)TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
公式HP: http://limitless-movie.jp/
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