美しき豪邸で繰り広げられる、メイドと主人との禁断の愛、そして残酷な結末……。故キム・ギヨン監督の『下女』を、韓国NO.1女優とも評されるチョン・ドヨンを主演に迎えてリメイクした本作。韓国社会への皮肉も込めながら、欲望と嫉妬が絡まりあい、妖しくそして悲しくスクリーンに蠢く。
上流階級の豪邸でメイドとして働くことになったウニ(チョン・ドヨン)。家事全般はもとより、妊娠中の妻と6歳になる娘の世話も彼女の仕事だ。
特に子供の世話は彼女にとってこの上ない幸福だった。なぜなら、彼女は無類の子供好きだったからだ。そんなある日、主人と秘密の関係を持ってしまったウニだったが……。
オフィシャルサイトのあらすじには「ウニが主人から関係を迫られた」旨の表記があるが、実は微妙に異なる。それは観てのお楽しみ、ということでここでは詳しくは書かないでおこう。いずれにせよそうした関係を持ってしまった彼と彼女だが、どちらにも罪の意識は薄い。
もし日本で同じことが起こったなら彼女のような行動を取る人は稀だろうが、そこは韓国というお国柄なのか、それともウニというキャラクター設定のなせる業なのか、寝取ったことを悪いと思っている節はさほどない。
また、主人にしても妻への罪の意識はないどころか、金に物を言わせ、浮気して当然とばかりに振舞い、貧富の差がモラルをも奪っている現実を冷酷に描く。
もしかしたらこの日本という国にだってお金持ちの中にはこんな人もいるのかもしれないが、幸か不幸かリアルでそんな人を知らない凡人の私にとってはなかなか理解も共感もできず、従って物語に深く心が入っていくこともなく、傍観者のようにスクリーンを眺めるだけだった。
ただ、ウニの知性が低いという描写がもっともっとあったなら、また見方も変わったのだろうが。
「『母なる証明 』(10年)を超える衝撃」との売り文句だったが、あの作品のように完璧なまでの伏線の回収はなく、ラストの衝撃も、それはまあ残酷といえば残酷だが、『母なる証明』を超えてはいない。ただこれは私の個人的な線引きなので、本作のほうが衝撃という人もきっといることだろう。
メイドを雇ったこともメイドになったこともメイド喫茶に行ったこともない私にとっては、この世界を垣間見ることができたのは非常に興味深かった。惜しげもなく披露されるチョン・ドヨンの肢体、主人とのリアルな関係のシーン、それらも見どころだろう。
踏み入れてはいけない禁断のこの領域は、観た者の心の中の、何か危ないものを解き放つのかもしれない。
監督・脚本:イム・サンス
出演:チョン・ドヨン/イ・ジョンジェ/ソウ/ユン・ヨジョン
配給:ギャガ
公開:8月27日(土)、TOHOシネマズ シャンテ 他 全国順次ロードショー
公式HP:http://housemaid.gaga.ne.jp
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