『アイアンマン 』、『スパイダーマン』シリーズを送り出したマーベルの大人気コミックの実写化版である本作、今度の主役は「神」だ。アンソニー・ホプキンス、ナタリー・ポートマンらのスター俳優に混じり、浅野忠信もハリウッド初出演として参戦。ド迫力の3D映像がスクリーン狭しと暴れまくる。
神の世界で最強の戦士だったソー(クリス・へムズワース)。やんちゃで身勝手な性格ゆえに神々の王でいて父でもあるオーディン(アンソニー・ホプキンス)から地球への追放を食らってしまう。天文学者ジェーン(ナタリー・ポートマン)たちと慣れない人間生活を送るなか、徐々に人としての大切なことに気づいていき……。
今までのマーベルのヒーローものといえば、普通の人間に特殊能力が備わった結果、苦悩したり地球を救ったり……といったものが大半だった。だが本作はそれらとはまったく真逆で、もともと人智を超えた力を持っていた存在がその力を奪われ無力と化してしまう、その苦悩を描いている。突然「神」という職をリストラされてしまった男が、再び前職を取り戻すために躍起になる物語なのだ。
また、登場人物たちが神とはいえ、彼らは宇宙にただ一人の至幸神ではなく、北欧神話に出てくる人格を持った神々たちだ。たとえ強大な力を持っているとはいえ、似たような力を大勢が持っていればそれは特殊能力ではなくなり、人間関係の様々な軋轢が生じる。設定こそ神だが、その中身や苦悩は人間そのものだ。
先行公開されている56カ国で軒並み初登場1位を獲得しているのも、そんな人間らしいキャラクターやストーリー展開を、シェイクスピア劇の名手であり自らも俳優であるケネス・ブラナーが監督し、アクションのみならずドラマとしもこの上ないクオリティへと昇華しているからだろう。
ソーの武器はハンマー。剣や槍、弓と違い、丈が短いからかさほど格好良くはない代物である。だが、へムズワースの体格があまりにも良すぎ、またその性格がやんちゃ坊主のようであるからか、不恰好にも係らず結構サマになっている。彼の格闘シーンは凄まじいものがありカッコイイのだが、普段の姿はカワイイと思えてしまう不思議な魅力を醸し出している。へムズワースにとっては本作が俳優としてのブレイク作となるだろうが、女子たちはおろか男子たちの視線をも釘づけにすることは間違いない。
マーベルのヒーローたちが集結する『アベンジャーズ』(2012年公開予定)にも出演するとのことで、ますます目が離せない逸材だ。
我らが日本人代表、浅野忠信は、ソーを守る戦士の一人、寡黙で高潔な東洋人キャラとしての登場。台詞はほんの数箇所だが、物語の流れを変える重要な言葉を朴訥にサラッと言ってのけている。
また、時間にしてはほんの少しだけだが、ある役でジェレミー・レナーが出演。大スター、マット・デイモンの後釜としてジェイソン・ボーンを演じるだけあり、たったあれだけの露出なのに存在感がハンパない。
わざわざほっぺにニキビを施して「仕事一筋のイケてない科学者」を演出しているナタリー・ポートマンも、並々ならぬ貫禄のアンソニー・ホプキンスも、当然のことながら素晴らしい。
神々の世界の美しさ、荘厳さは目を見張るものがあり、ファンタジー・アクションとしては申し分ない出来。家でチマチマDVDでなく、劇場でドッカーンと楽しみたい傑作だ。
監督:ケネス・ブラナー
出演:クリス・へムズワース/ナタリー・ポートマン/アンソニー・ホプキンス/浅野忠信/トム・ヒデルストン/レネ・ルッソ
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
公開:7月2日(土)より、丸の内ルーブル他全国超拡大ロードショー(3D/2D同時公開)
公式HP:http://www.mighty-thor.jp
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