十三人の刺客

役所広司、市村正親、山田孝之、伊勢谷友介、伊原剛志、松方弘樹、松本幸四郎、沢村一樹、六角精児。錚々たる顔ぶれの刺客たち13人が、稲垣吾郎扮する暴君を倒すべく300人を超える兵たちと死闘を繰り広げる。本作は時代劇映画の名作、1963年公開の工藤栄一監督『十三人の刺客』のリメイク作だ。

将軍の弟・松平斉韶(稲垣吾郎)は、その権力に物を言わせ残虐の所業を尽くしていた。天下万民のため、島田新左衛門(役所広司)の下に集められた13人の刺客は一世一代の戦いを仕掛ける。斉韶の名参謀・鬼頭半兵衛(市村正親)との知力戦の中、その戦いの火蓋は切って落とされる……。

なんと言っても、みどころはラスト50分のリアルすぎる死闘。
クローズZERO』の三池崇史監督の手によるそれは、刀で身を斬られる激痛さえもまざまざと伝わってくるようで、心臓の弱い方はまともに見ていられないだろう。しかもただただ斬って斬りまくるだけではなく、要塞へと改造された落合宿はあたかもアトラクションのように様々な仕掛けが施されており、50分という長い時間の中でもまったく見飽きることなどない。
つるんとした顔で何の気なしに残酷な行為をやってのける稲垣も、現代を象徴するようで恐ろしく素晴らしい。自分の行為を正しいと信じて疑わないその理論は、悪魔の理屈でありそしてただの屁理屈でもある。「我」というものが栄養失調児の腹のように肥大しているそのさまは、昨今の無差別殺人を行う若者はもとより社会問題にもなっている理不尽クレーマーやモンスター・ペアレントをも髣髴とさせ、現代の闇を小気味よく風刺している。

ラスト、役所が稲垣に対して真っ先に行なったあの行為は、かつての同門・市村に対する真の友情から来るものであろう。今回の飄々とした役所キャラはまさに本物の男の武士道を示したもの。ヴェネチア国際映画祭では残念ながら賞を逃したが、上映後、映画祭関係者に静止されるまで7分間もスタンディング・オベーションが続いたというだけあって、国際的評価も得られたと言えるのではないだろうか。
まさしく骨太な大傑作は、ぜひとも劇場でご覧いただきたい。

十三人の刺客(1963年版)
原作:池宮彰一郎
監督:三池崇史
脚本:天願大介
出演:役所広司 /山田孝之 /伊勢谷友介/沢村一樹/古田新太/高岡蒼甫/六角精児/波岡一喜/近藤公園/石垣佑磨/窪田正孝/伊原剛志/松方弘樹/松本幸四郎/稲垣吾郎
配給:東宝
ジャンル:邦画
公式サイト:http://13assassins.jp/

© 2010「十三人の刺客」製作委員会