ロバート・デ・ニーロ、ショーン・ペン、ブルース・ウィリス……と、そうそうたる面子が揃い、ハリウッドの内幕を暴くシニカル・コメディ。イケメン男子やそそられる美女の私生活が我々と大して変わらないのと同様、いかに美しく感動を伝えるあの映画も、もしかしたらこんなにドロドロなのかも? と、その男子や女子の見たくない一面を覗き見している錯覚に陥るような……まだまだ「映画」に「栄華」な夢を見ていたいイタイケな青少年の夢を打ち砕くにはもってこいなのが本作だ。
ベン(ロバート・デ・ニーロ)はハリウッドの敏腕プロデューサー。カンヌ映画祭に出品するショーン・ペン主演映画の試写会に同席するも、観客アンケートが不評だったため映画会社の女社長からラストシーンの再編集を命じられる。だが、いかにも芸術家肌の監督はなかなか説得に応じず、交渉は難航。おまけに別作品のクランクインを前に、主演のブルース・ウィリスは髭を剃りたがらず、ベンはまたもや映画会社と板ばさみに……。
どの仕事でもそうだろうが、たとえどんなに華やかに見える業界であれ、いったん中に入ってしまえば仕事は仕事。スターも監督もひとりの人間で、仕事として金が動く限り出資者の言うことを聞かねばならない。だが好きなことを仕事にしてしまったがゆえの苦悩、というものが幸か不幸か彼らには付きまとう。趣味ならば自分が出資者であるわけだから、何もかも好きにやれる。だが他人が金を出して自分がそれを貰って飯を食う以上、利益を得られないと判断されたら方向修正を余儀なくされる。自分の望んでいない方向に舵を切らねばならない事態が何度でも訪れる。それが出来るか否かがプロかそうでないかの分かれ際なのだ。そのあたり、映画業界ではどうなのか? の事細かな描写がスカッとするほどリアルに描かれており、小気味いい限りだ。しかしこれがたったの二週間での出来事だというのだから、その浮き沈みのスピードたるや、怖い怖い。諸行無常とはこのことか。
あの華やかな映画業界ですらこうなのだから、我々の仕事だってツライことがあって当たり前なんだな、じゃ頑張らなきゃな……と、妙に前向きにもなれる逸品。夏休み気分を抜いてあげるためにも、お子さまに社会勉強として見せてあげるのもアリかも?
トラブル・イン・ハリウッド スペシャル・エディション(DVD)
原作:アート・リンソン
監督:バリー・レヴィンソン
脚本:アート・リンソン
出演:ロバート・デ・ニーロ /ショーン・ペン /キャサリン・キーナー/ブルース・ウィリス/ジョン・タトゥーロ/ロビン・ライト・ペン/スタンレー・ツィッチ/クリステン・スチュワー
配給:フリーマン・オフィス
ジャンル:洋画
公式サイト:http://www.tih-movie.com/
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