Dr.パルナサスの鏡

本作の撮影半ば、28歳という若さで夭折したヒース・レジャー。訃報を聞いたトム・クルーズが代役を買って出るが、監督のテリー・ギリアムはその世界的スーパースターからの申し出を断ってしまったという。ヒースの本当の友人たちにその遺志を継いでほしかったからだ。そしてジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルという、ヒースの真の盟友であり、なおかつハリウッドでも名を馳せる実力派俳優たちが集結し、見事その遺作を完成させたのだ。

2007年。パルナサス博士が率いる旅芸人の一座がロンドンにやってきた。博士の出し物は「イマジナリウム」。人が密かに心に隠し持つ欲望の世界を鏡の向こうで具現化してみせるという代物だ。だが、1000歳になる博士には悲しい秘密があった。かつて“不死”と交換に、娘が16歳を迎えた日に悪魔に差し出す約束を交わしてしまっていたのだ。偶然に現れた記憶喪失の謎の青年トニー(ヒース・レジャー、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレル)とともに、博士は娘を守ろうとするが……。

“ギリアム・ワールド”らしく、その深層心理を映し出すという鏡の迷宮はファンタジックでありながらも現実を鋭く風刺し、夢から覚めてしまいそうなほどリアルだ。ギリアムが描き出す「心の世界」は、我々が夜寝ているときに見る夢のように、筋道だったストーリーがなく、誰かや何かが突然現れ、支離滅裂に物語が進んでいく。鏡の世界が本当の夢と違う点は、自分の意思でその夢の中を動くことができ、様々な選択ができるということだ。善と悪では、善を選んだほうが当然良いし、本来そうすべきであろう。だが、人間は全員が全員、聖人なわけではない。
つい誘惑に負けていつものとおりにその鏡の中で行動してしまうと、とんでもない目に遭ってしまう。その“とんでもない”が各人各様でありながら、観客から見ても「あるある!」と共感できるものばかりなので、美しい映像に見とれながらもついつい苦笑してしまうのだ。

未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』『ブラザーズ・グリム』でもその才能を轟かせた鬼才テリー・ギリアムの、最高傑作とも囁かれる本作。壮大で幻想的なその映像世界に、ぜひ大きなスクリーンで圧倒されてほしい。

Dr.パルナサスの鏡(Blu-ray)
爆笑問題の2人がヒット祈願!
監督:テリー・ギリアム
脚本:テリー・ギリアム/チャールズ・マッケオン
出演:ヒース・レジャー /クリストファー・プラマー /リリー・コール/ヴァーン・トロイヤー/アンドリュー・ガーフィールド/トム・ウェイツ/ジョニー・デップ/ジュード・ロウ/コリン・フ
配給:ショウゲート
ジャンル:洋画
公式サイト:http://www.parnassus.jp/index.html

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