7つの贈り物

到底、この贈り物は受け取ってはいけない。無論、贈ってもいけない。いや、喜んで受け取らなければいけない。これは究極の贈り物なのだから…。

鑑賞後、観客の意見は真っ二つに分かれるだろう。映画ライターとしての私は、宣伝のためにも、本来なら後者の意見を持つべきだ。だが、本音は前者なのが実状だ。

主人公(ウィル・スミス)は互いに何の関係もない7人の他人のリストを手にしていた。彼らに近づいてその人生を調べ、条件に一致したならば、彼らの人生を永遠に変える贈り物を渡そうというのだ。彼の目的は一体何なのか? 彼らに一体、何を渡すつもりなのか? 様々な謎を含みながら、物語は重く深く進んでいく…。

衝撃の結末、と謳う映画は数多い。実際、『ミスト』などはその文言と違えることなく、目を覆うほどの結末を見せつけてくれた。そして本作も同様の衝撃を心に刻み込む結末を観客に与えてくれるだろう。

これは美談だ。究極の美談だ。彼をヒーローと呼ぶことは易しいだろう。だが、そこで思考停止していただきたくはない。

彼の行為は本当に正しかったのか? それしか彼を救う道はなかったのか? ウィル・スミスが演じているからサマになっているが、これが現実に起こったのなら洒落にならないのではないか? 贈られたほうはもしかして、気が狂ってしまうのではないか? それより何より、彼は自分の人生から逃げてはいけなかったのではないか? …

そんな疑問を、自分の心が本当に納得するまで考えるべき映画なのだ。よくテレビ番組で「よい子は真似をしないでください」というスーパーが流れることがあるが、この映画も、主人公の真似をする人が1人でも出てきてはいけないのだろうから。

確かに、映画史上に残る、ある意味で究極の“ヒーロー”の姿だろう。と同時に、彼は天使ではなく、天使の姿を借りた悪魔なのでは? とも思えてしまう。良くも悪くも、ここまで色々なことを考えさせられる映画も昨今では珍しい。そうした意味では、心に深く刻み込まれる1作なのだ。

7つの贈り物(Blu-ray)
ウィル・スミスほか来日!
監督:ガブリエレ・ムッチーノ
脚本:グラント・ニーポート
出演:ウィル・スミス /ロザリオ・ドーソン /ウディ・ハレルソン/バリー・ペッパー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
ジャンル:洋画