ラフマニノフ ある愛の調べ

大概、芸術家というものは神経質であろう。取るに足らない小さなことに一喜一憂する繊細な神経を持っているからこそ、些細な事象の中に“心を動かす何か”を発見できるのだ。そんな芸術家だから、人生は波乱万丈を余儀なくされる。天才作曲家ラフマニノフも例に漏れず、繊細で小心そうな外見からは想像もつかないような怒涛の一生を送っていた。
ラフマニノフで有名な楽曲といえば、1901年に発表された「ピアノ協奏曲第2番」である。古くは『逢びき』、『七年目の浮気』に使われたほか、最近では『のだめカンタービレ』にも使われるなどして若年層のファンも獲得している。また、音楽映画の名作『シャイン』では世界一難しい曲として「ピアノ協奏曲第3番」が使用されている。そんな“難しい曲”を作りあげた張本人だけあって、私生活でもただならぬ“難しさ”に溢れていただろうことは想像に難くない。

だが、そんな芸術家であっても、元はといえば一人の人間だ。生まれ落ち、人生の目標を定め、ときには挫折し、恋もし、恋に破れ、また別の恋をし、いずれぱ家族を持ち、そしてときには夫婦喧嘩もし、仲直りをし…そんなことを繰り返しながら年老いていく。だがいずれにせよ、いつの日も自分を支えてくれているのば自分以外の他人であることもまた事実だ。それが友であったり、師であったり、恋人であったり、伴侶であったり。大きな目標を掲げて努力している最中でも、親しい人と仲違いをしているだけで、それだけで力が発揮できなかったりもする。逆に周囲と調和の取れた関係を保っているだけで、いつもの倍以上の力が出せたりもする。人間は自分一人で生きるものではない…とどこかの格言にあったような気もするが、家族や友人関係の如何という一見小さな出来事が、大きな仕事の成功不成功を分けてもいるのだ。
ときに歴史ものといえば、当の主人公が実物に似ているかどうかも重要な要素だ。本作でラフマニノフを演じるエフゲニー・ツィガノフだが、実在のラフマニノフにそっくりである。と同時に、芸術家特有の繊細さ、神経質な様を素晴らしい演技力で演じきっている名優でもある。

ラフマニノフ ある愛の調べ(DVD)
監督:パーヴェル・ルンギン
脚本:ミハエル・ドゥナエフ/ルシンダ・コクソン/パーヴェル・フィン
出演:エフゲニー・ツィガノフ /ヴィクトリア・トルストガノヴァ /ヴィクトリヤ・イサコヴァ
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
ジャンル:洋画

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